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新しい絆創膏がふんわりと乗せられて、その上からまるで大切な壊れ物を扱うように、そっと優しくポンポンと押さえる長い指。
「岸くん、手、綺麗だね」
『ほんと？結構そう言ってもらえるんだよね！』
嬉しそうな笑顔を浮かべながらパッと開いて見せてくれた手は、男らしく骨ばっているけれど、スラッとしていて。
白くて、綺麗で、大きくて、あたたかくて。
まるで岸くんの心そのものみたい。
その手がしっかりと覆ってくれた傷は、きっとすぐに治るような気がした。
そのまま一緒にお店を出て、これからジムに行くらしい岸くんと駅の方まで並んで歩いた。
涼し気に澄み渡る真っ青な空。
道端の草木は緑から黄へと色を変え、外はすっかり秋の匂いがする。
「岸くんってなんでジムに通ってるの？」
『なんで！？えーっ、と〜…筋肉は裏切らないから』
「ふふっ。なにそれ」
『いやぁ、なんだろな。優しさと強さを兼ね備えた男でいたいんだよね。そしたらいざという時に大切なもの守れるかなって』
真面目な顔をしてそう答える岸くんを見て、妙に納得する自分がいた。
岸くんらしい。そう思った。
気づけばすぐそこに見えてきた駅。
手前に立つビルの中に岸くんの通うジムが入っているらしい。
『じゃあ今日も強くなってくるわ！またね！』
「岸くん！」
思わず呼び止めれば、ナップサックを背負った背中が振り返る。
「……ありがとう」
その言葉に含んだ想いは一つじゃない。
今日の傷の手当と、それから……
岸くんは私の左腕にチラッと視線を移したあと、目尻を下げて微笑んだ。
『全然！俺でよければいつでも頼って！』
返ってきた彼の言葉には、きっと特に意味なんてなくて。
自分の損得とか、欲望とか。
誰が何をしたとか、自分が何をされたとか。
そんなことは全部後回しにして、ただ目の前にいる誰かの為に動くことがあたりまえな人なんだと思う。
そんな岸くんの姿が見えなくなるまで見送ったあと、私は駅の反対側へと向かって歩いた。
優しさと強さ、か。
私は、そのどちらかでも持てているだろうか。
いざという時、大切なものを守れるだろうか。
私の大切なものって、なんだろう。
そういえば前に天使が言ってた。
──君の大切なものは、僕が預かってる
自分のことなのに。
今の私には、これだと言えるものも、それを知る術もなかった。
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
