#21 ページ21
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誰でもいい。私と結ばれてくれさえすれば。
何でもいい。元の世界に戻ることさえできれば。
そう、思っていたのに。
『Aちゃんって案外チープなんだね』
私を見下ろす彼の妖しい笑みを目の前にして、私の中の危険信号が警鐘を鳴らし、真っ赤な光がものすごい速さで点滅している。
彼は、危険だ。
子犬が狼に変貌するまで一瞬だった。
扉が閉まると同時に掴まれた腕。
壁に押さえつけられた手首。
全身を覆った影。
絡みつくように捕らえられた視線からは逃れられなかった。
「どう…したの…？」
『ん？なにが？』
「だって、急にこんな…」
『急に？それは逆に俺が聞きたいんだけど』
その表情からはもう優しさなど微塵も感じられない。
言葉の意味を咀嚼する間もなく、次に放たれた声は低く深く胸のど真ん中に突き立てられた。
『なんで急に岸くんにキスなんてしたの？』
「なっ、…んで…」
血の気が引いていくのを感じた。
彼は、知らないはずだったのに。
『だって明らかに怪しいんだもん。問い詰めてもしばらく渋ってたけど、ずっと食べたがってた高級お蕎麦奢るっていったらすぐ自供したよ』
意思弱ぁ……チョロォ……
洗練された少年のようなくしゃっとした笑顔が脳裏を過る。
誰にも言わないで、なんてお願いしてないしそんなこと言える立場でもないし、どちらかというとすぐ誰かに話すだろうと思っていたから予想の範囲内ではあったけれど。
問題は、どうして目の前の彼は事実を知っていながら知らないフリをしてここまできたのか。
『岸くんのこと好きなの？』
「ちがっ…！！」
否定をすれば疑問と非難をぶつけられることは免れないし、肯定をすれば��好きだから一方的にキスをした��とんでもなく軽い女認定は免れない。
どちらにせよ私に勝ち目はない。
『ねぇ、俺にもしてよ』
「……え？」
『好きじゃなくてもしちゃうんでしょ？』
「それは……」
『ん？』
目線の高さを合わせるように近づけられた顔が、その表情を確認できないほどすぐ目の前にある。
少しでも動けば触れてしまいそうな距離。
ここで海人くんに押し負かされたら、もうあとがない。相手は誰でもいい��ふしだらな女��のレッテルが粘着強く貼られてしまう。それこそゲームオーバーだ。
かといって、壁に縫いつけられた両手は使えない。
ここを打開するには……
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
