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『おつかれ〜』
飼い主を待っていた子犬のように駆け寄ってきて、
まるで待ち合わせをしていた恋人かのように「行こっか」なんて差し出された手を、私は見なかったことにして歩き出した。
『えっ、なんで！？』
「逆になんで？？」
『同じマンションに向かうんだから一緒に行ったっていいじゃん！』
「2時間も待つ？普通手繋ぐ？」
『相手が好きな子なら！』
「え…？」
思わず立ち止まった。
あれ？急展開すぎるけど、もしかしていちばん手っ取り早いのって海人くん？
何か企んでるのかと思って警戒してたけど、そういうこと？
いや違う。
こういう子犬タイプは誰にでもしっぽを振って着いていくんだ。そもそも会うのはまだ3度目だし、ろくに会話もしていない。好きになるわけがない。
危うく騙されるところだった。
自問自答を一瞬で終わらせて再び歩き出せば、子犬はニコニコしながら隣に並んだ。
『Aちゃんって誰がタイプなの？』
「は？！？！」
『合コンの時なにも教えてくれなかったからさ〜気になってたの！俺らの中で誰がいちばんタイプ？』
え、なに、犬種の話？
この子がチワワで、神宮寺くんがトイプードル？
岸くんが柴犬で、廉くんは……猫かな。
紫耀くんは……
「べっ、べつに、誰がとか、そういうの、ない」
そう言いながらも無意識に思い浮かべていた紫耀くんの顔。
ふーん、とつまらなそうに口を尖らせる新種のチワワの自由すぎる言動に適当に対応していたら、あっという間に家に着いた。
「じゃあね」
紫耀くんの部屋の前に立つ彼にそう告げてから、自分の部屋の鍵を差し込んだところで腕を掴まれた。
「なに…？」
『いなかった』
「え？」
『紫耀いなかった』
無表情で私を見ながら、もう片方の手は紫耀くんちのインターホンのボタンを連打しまくっている彼の無言の訴え。
嫌な予感がした。
「残念だったね、また今度にしたら？じゃあまた…」
素早く扉を最小限の幅だけ開いて、その隙間に上手く身体を滑り込ませ、急いで扉を閉めた、
つもりだった。
閉まった手応えがない。
恐る恐るゆっくりと振り返れば、
大きな手で扉を押さえていた海人くんが、とびっきりの笑顔を浮かべていた。
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
