アメフリレインボウー2ー (ページ9)

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#9 nimbostratus ページ9

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嫌じゃ、なかった。

決して間違いではない答えに首を縦に振れば

彼は表情は変えないまま、さらに言葉を重ねる。

『俺のこと、どう思ってる？』

「どう、って…」

『好き？』

しっかりと捉えられた絡みつくような視線。

そこには不安のような、怯えのような

何かに縋るようなものにも感じられた。

＂好き＂にも、種類があるけれど

好きかどうかを聞かれれば答えは単純で

繊細で今にも消えてしまいそうな彼を目の前にして

深いことは考えずに素直にゆっくりと頷いた。

その瞬間

勢いよくグイッと引き寄せられた腕と遮られた視界。

背中に回された手と全身を包み込む温もりが

決して偶発的なものなんかじゃなく

二人の距離を無くしていることを物語っていて

「……髙橋くん？」

突然の素振りに心が読めなくて

私の肩に埋めていた顔をそっと上げた彼の表情を

確かめるように下から見上げたとき

少しの猶予も与えられることなく目の前を覆った影は

私の言葉を拒むかのようにそっと重ねられた。

さっきのとは違う。

額に残っていた熱はあっという間に掻き消され

まるで上書きをするかのように

確かに落とされた唇への熱は

羞恥や驚きをも超えて、目の奥へと伝わっていく。

細かいことは考えてもわからない。どうでもいい。

何が起こったのか、そのことだけを理解したとき

今にも溢れ出しそうなものを堪えながら

頭の中に思い浮かんできたのは

口角を上げて得意気に笑う、永瀬くんの顔だった。

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