アメフリレインボウー2ー (ページ22)

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#22 balmy ページ22

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あれ？

新学期の始まりって

こんなにワクワクするものだっけ？

長い休みの間に身体に染み付いた怠惰を

引きずったまま重い体を持ち上げて登校する

もっと憂鬱なものじゃなかった？

久々に友達に会える、とか

楽しい学校生活がまた始まる、とか

そう思う人も中にはいるだろうけど

少なくとも私は

そんなふうに思える類の人間じゃなかったはずだ。

なんだろう。この心の軽快さは。

懐かしくも思える教室に足を踏み入れ

何一つ変わらない自分の席に腰を下ろせば

誘因のわからない高揚感さえ覚える。

何か楽しみなことでもあったっけ？

いや、浮かれるどころかきっとこの先は

受験モードが加速して周囲はピリピリだ。

かくいう私は蚊帳の外というわけではないけれど

比較的穏やかな場所にいる。

難関校を目指しているわけでもなければ

大学進学のために猛勉強が必要なわけでもない。

進学先は、製菓中心の調理の専門学校。

もともとほんの興味本位で始めた

パン屋のバイトだったけれど

ある時ふと製造に関心が芽生えたのだ。

特別人気校でもなく

合格基準も厳しくはない学校だから

もちろん油断は禁物だけれど

過度なプレッシャーみたいなものはない。

最低限の知識と教養と態度と

作文や面接による意欲や前向きな姿勢を

上手く意思表示すれば事なきを得る道。

無事に合格さえすれば

あとは必死に頑張っている人達の邪魔をせず

刺激を与えないよう陰でみんなの成功を祈り

静かに平々と過ごして卒業を迎える。

そんな穏やかな道筋。

変わったことは何も無い。

変わったことは──

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おはよ。

雑音が絡み合う朝の教室内。

その中からするりと抜け出したように

透き通り届いた柔らかく澄んだ音色。

それがどこへ向けられたものなのかわからず

反応しきれぬうちに無造作に引かれた目の前の椅子。

そこへストンと落ちてきた影に

胸が小さく跳ね上がる。

ああ、これか。

学校行事でも、何かのイベントでも何でもない。

空が綺麗に晴れた日の白い雲のように

こんなにも心がふわっと浮き立つのは

きっと、永瀬くんのせいだ。

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