アメフリレインボウー2ー (ページ18)

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#18 nimbostratus ページ18

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まるで魔法使いみたい。

自分でも見えていなかった感情が

永瀬くんを前にして溢れ出してくる。

本当は、何もよくなんてない。

一時的に軽くなった心も、また一人になれば

自分ではどうしようもなくなって、重みを増す。

だからといって、解決策なんてものもない。

この涙を流し切れば何か変わるのだろうか。

胸につっかえた痛みもやり場のない気持ちも

悲しみもすべて一緒に流れてくれるのだろうか。

何をしたところで、現実が変わるわけじゃない。

時の流れに任せるしかないのかもしれない。

流れゆく涙を掌で拭っていったとき

何かのスイッチが入ったように

一段と高く透き通った永瀬くんの声が空を切った。

『あー、あのソース顔やってんなあ。

理由は何であれ女の子泣かすのはアウトよな。

しかも気の強そうなAちゃんやからなー』

気強そう、って思われてたんだ…

チラッと視線を向けた先で

ちょうど茶色い瞳と目が合ったかと思えば

永瀬くんはゆっくりとこちらに近づいてきた。

『もう特濃ソースにしたろかな。な？』

近づいてきた影は目の前で立ち止まり

悪戯な笑みを口元に浮かべて

ビールケースに座ったままの私を見下ろす。

なんか、近い。

彼独特の距離感の問題？

後ろは壁。

おまけに座った体勢でうまく身動きも取れず

ソースどうこうの話もよくわからないまま

誘導されるかのようにコクリと頷けば

下から見上げてもなお美しく整った顔は

胸を突き刺さすようにまっすぐな瞳を向けて

ポツリと言葉をこぼした。

『ごめんな。俺、ようわからへんのやけど…』

一度逸らされた視線。

ここに流れる音は、自動販売機の稼働音と

遠くの方で聞こえる車の走る音。

それから、彼が漏らした小さな吐息。

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