アメフリレインボウー2ー (ページ32)

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#32 pouring ページ32

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「…わかった。でも、永瀬くんは大丈夫なの？」

この先のことは私には想像もつかないけれど

ただ漠然とした不安と心配で漏らした言葉に

永瀬くんは「ふふっ」と小さく笑った。

『事務所にはちゃんと説明してあるし

あのネタ流したのがその手の職種のプロでも

なければ信憑性もない一般人のもんやったから

そこまで大事にはならへんみたいやし大丈夫やで。』

永瀬くんがそう言うのなら

たぶん、大丈夫なんだと思う。

「でも…」

どうしたって避けられないであろう

外部からの非難が不条理に彼に浴びせられないか

それでも彼は本当に笑っていられるのか

口篭った私のそんな心配を汲み取ったかのように

心做しかワントーン高くなった声が再び流れ込む。

『俺のこと見くびってへん？』

「えっ？」

『そりゃ嫌でも見て見ぬふりせなあかんこともあるし

理不尽やなーって思うこともめちゃめちゃあるけど

それくらいのことは覚悟してこの仕事しとるから。』

サラっと言いのけたように聞こえた言葉だけど

そこには確かな強い意志を感じた。

『それに、本当のこと知っとる人が一人でも

おればいいのよ。俺の大事な人だったり

好きなやつが信じてくれてればそれで充分やから。』

──ありがとうな

相変わらず口調は少し粗いけど

柔らかくて透き通るような優しい音。

『てか俺はAちゃんの方が心配やねんけど。』

もし私が彼と同じ状況に置かれたら

とてもじゃないけれど

こんなにも強く優しくいられる自信はない。

「大丈夫だよ。結構図太いんだから」

だからせめて強がって

大丈夫だと自分に言い聞かせる。

永瀬くんはまた小さく笑ってから

「でも、」と言葉を重ねた。

『もしかしたら今回のことで

Aちゃんに嫌なことが起きるかもしらん。

そうならんようにできる限りフォローには入るけど

もしなんかあったら、俺に連絡して』

肩の荷が下りたようなほんの安らぎと同時に

胸に襲いかかってきた殺伐とした不穏な何か。

『ほんまにごめんな』

いつでも彼とコンタクトが取れる手段はあって

きっと明日も学校へ行けば

永瀬くんは目の前の席に座っているはずなのに

彼にはもう二度と会えないような気がした。

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