アメフリレインボウ (ページ10)

今日:5 hit、昨日:29 hit、合計:85,922 hit

#10 raindrop ページ10

.

大通りに出たところで

バイトの時間が迫っていることに気づいた。

一緒に足を早めてお店の前まで傘に入れてくれた彼に

一言お礼を告げて店内に駆け込む。

なんか、思ってたより普通っていうか

意外と話しやすかったな。

そういえばこっちにくるまでは

関西にいたって話を聞いたこともあるし

そもそも気さくな人なのかもしれない。

少しイメージの変わった彼の

さっきまで隣にあった横顔を思い浮かべながら

急いで着替えを終わらせ作業に取りかかった。

パン屋のバイトといっても

夕方からの学生バイトの仕事内容は

ほぼ締め作業みたいなもの。

売れ残ってるパンを整理しつつ

時々現れるお客さん対応とトレーやトングの拭き作業

鉄板や包丁の片付けや店内の掃除などで

あっという間に時間は過ぎていく。

今日は考え事をしていたせいか

閉店の時間が訪れるのがより早く感じた。

『雨止まないね～』

厨房の電気を消して店の奥から顔を出したのは

一緒にシフトに入っていた他校の同い年の髙橋くん。

目を向けた窓ガラスの向こう側では

濃紺の夜空から銀色の雨が降り注いでいた。

『戸締りもよしっ！帰ろっか』

片手の人差し指に鍵をぶら下げて

今日もふんわりと柔らかな笑顔が

疲れた心を癒してくれる。

いつもほんわかしてて、ちょっとだけ抜けてて

だけどかっこよくて、優しくて

そんな髙橋くんが、バイト仲間やパートさん

お客さんにも人気があるのも頷ける。

実際、彼目当てでお店に来る女の子も少なくない。

本人もまんざらではなさそうだけど

それも全然嫌味っぽくなくて

彼は自然と人を惹き寄せる、愛されキャラだ。

.