アメフリレインボウ (ページ49)

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#49 shower ページ49

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ここへ来るはずのなかった彼が

どうして現れたのか、その理由を知ったとき

心のどこかで頑なに守り続けていた

緩み始めていた地盤がいよいよ崩れ出すのを感じた。

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私がこれまで見ていた彼の姿は

自分勝手に作り出したレンズで映していた模造だ。

彼のことなんて知らない、知ろうともしないまま

薄汚い感情の赴くまま空想で作り出した幻影だ。

異世界に住む彼と向き合うことが

間違いなのではない。

そもそも永瀬くんは、ここに存在しているじゃない。

まだ蒼さを見せている同じ空の下で

同じ景色の見える、同じ世界のちっぽけな一画に

私は一緒に立っているじゃない。

間違っているのは

遠くから眺めたものを全部見えた気になって

空言由来のレッテルを貼り付けることだ。

今目の前いる＂永瀬廉＂は

同じ学校に通う一高校生で、クラスメイトで

それ以外の何者でもないのだから。

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どこに焦点を当てるわけでもなく

質素な光景を瞳に映しながら

苦々しく片方の口角を上げた永瀬くんの側に

私はそっと歩み寄った。

「これ」

いつもは見上げている整った綺麗な顔が

下から私を見上げると、差し出した物を

じっとみつめてから不思議そうに目を瞬かせた。

「これなら、今からでもできるよ」

このパンダなら、着ぐるみなら。

周りの目を気にする必要もない。

少し視界は狭いけれど、ちゃんと見ることもできる。

みんなと同じ空間で、同じ世界を。

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ゆっくりと伸びてきた手がそれを受け取ると

永瀬くんは小さな笑みを浮かべながら

呟くように「あほか」と声を漏らした。

『なんで俺がパンダやらなあかんねん』

「＂特別枠＂なんでしょ？特別に貸してあげる」

わざと皮肉っぽく言ってみせると

だーるっ、なんて言いながら立ち上がって

言葉とは裏腹に着ぐるみに足を通し始めた永瀬くんは

胴体部分をなかなかの早さで着終わると

パンダの頭を抱えてニッと笑った。

『Aちゃんって、意外とうざいのな』

不意を突かれた今まで感じたことのない

違和感と驚きに声を失っている間に

永瀬くんはヒョイっとパンダを頭に被せた。

『んじゃ。しゃーないからちょっくら行ってくるわ』

そう言って校庭に出ていった背中は、やっぱり

言葉とは対照的になんだか楽しそうに見えた。

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