#39 shower ーRenー ページ39
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この日は朝からリハーサル、昼には撮影をして
休憩を挟んで夕方頃にまた別の撮影。
テレビ局主催の夏休み期間の大型イベント。
それも有難いことに大役として
携わることになった仕事に向けての準備は
まだ高校生の身である俺にとっては
正直なかなかの忙しさだった。
それでもその休憩の合間を縫ってまで学校へ来たのは
何の気の迷いだったんだろう。
意地でも仕事と学業を両立してやろうなんて
そんな美談のようなものじゃない。
時に感情って厄介なもので
自分のことなのにわからなくなったり
コントロールが効かなくなったり
意に反して身体が勝手に動いたり動かなかったり…
この時の俺はきっと、通り雨に打たれたように
突然襲われた衝動に突き動かされるがまま
届きそうで届かないものに少しでも触れてみたいと
必死に手を伸ばそうとしていた。
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できるだけ深く帽子を被って
人目につかないよう自然に振る舞いながら
たどり着いたのは、いつもの地味な佇まいから
打って変わって華やかに装飾された校門の前。
一般公開というだけあって
大勢の人で賑わう学校は新鮮で
文化祭という名の通り、ひとつのお祭りのように
華々しい盛り上がりを見せていた。
この雰囲気を肌で感じてみたかったんだ。
高校生活で1年に1度、人生でたった数回。
今、この時にしかない青春ってものを。
さっと見渡した限り、すぐに見つかると思っていた
あの姿は見当たらなくて
人混みを潜り抜けて入り込んだ校内で
繰り広げられる多種多様の出し物に
次々と目を移しながら向かった先は
「結構ええ感じやん」
自分のクラスの教室が見事に形を変えて
立派な��パン屋��になっていた。
俺が熟考して構成したものが
実際に模擬店として形になっているのを見るのは
ほぼパクリとはいえ感慨深い。
美味いから当然っちゃ当然だけど
売り物として出しているパンも好評みたいだった。
無理なお願いを快諾してくれた
ジャムおじさんみたいな店長を思い出して
心の中でお礼を言っておいた。
ただ、ここにもあの姿が見当たらない。
──パンダは客寄せやから外に出て宣伝するんやで
確かにそう言いつけておいたはずだけど
まさか俺がいないのをいいことに
客寄せパンダ放棄してるってことないよな？
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作者名：N | 作成日時：2020年8月14日 21時
