アメフリレインボウ (ページ23)

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#23 drizzling ページ23

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学校を出たあと、ふらふらと歩いて向かった先は

あんなに早く辿り着きたかった家ではなく

さっき寄ったばかりのバイト先のパン屋だった。

今日はシフトには入っていないけれど

昨日から続いている形容し難いこの感情を

一人ではどうにも消化できず

誰かに話を聞いてほしかったのだ。

とはいっても、ここにいるその相手は

もちろんバイト中なのだけれど。

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『で？どうしたの？』

夕方以降はほとんど使われることのない

数席だけ置かれているイートインの端っこに座り

突っ伏していた私のところへ

髙橋くんがトレーを持ってやってきた。

『サービス！』

目の前に置かれたのは

片方の耳が取れているぱんだパン。

「廃棄でしょ」

小さい子供のように口を尖らせながら

勤務中だということなんてお構い無しに

髙橋くんはなんだか楽しそうに隣に腰を下ろした。

『推理していい？』

「どうぞ」

わかるものなら教えて欲しい。

自分でさえよく分からず

迷宮を彷徨っているこの感情の正体を。

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──じゃあ、ちゃんと傘は返したから！

逃げるようにあの場を去ってきた。

永瀬くんと話している間

ずっと周囲から感じていた視線に

耐えられなくなってしまったから。

っていうのは、言い訳にすぎなくて。

これまで忌々しささえ感じていた彼に対する

偏見のフィルターが外れかかっている今

永瀬くんを目の前にすると

虚像のような、夢幻のような

その奥に見え隠れする漠然とした不安を

真正面から受け止めなければいけなくなる。

そんな気がして、怖かったんだ。

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