アメフリレインボウ (ページ14)

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#14 raindrop ページ14

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『失礼しまーす。すんませんティッシュって…』

反射的に顔を向けた先で視界に飛び込んできたのは

「あら。永瀬くんもティッシュ？」

保健室に入ってすぐ扉の手前で立ち止まった彼と

思い切り目が合った。

だけど、

朝と同じようにすぐに逸らされた視線は

再び先生の方へと向けられた。

『ティッシュあります？』

先生は軽く微笑んで頷いてから

さっきの棚の方へと向かっていく。

そういえば彼も今日

時々鼻をすすっていた気がする。

マスクをしているのは珍しいことじゃないから

あまり気にしていなかったけど

もしかして風邪を引いてしまったのだろうか。

「はい、どうぞ」

『どーも』

用が済んでいた私はこの場を離れればよかったものの

無意識に目の前のやりとりを眺めていたら

気づけば彼の方が先に保健室を出て行った。

我に返らせるように鳴り響いたチャイムが

昼休みの終わりを告げて

「失礼しました！」

慌てて廊下に飛び出せば

数歩先を歩く彼の背中が目に入って

また胸の奥の何かが小さな音を立てた。

比較的静かな保健室前の廊下を

彼から一定の距離を保ちながら足を進めていく。

なんだか悪いことでもしているかのような

不思議な気持ちになりながら

階段へと続く突き当たりの角でその姿が消えたとき

ほんのちょっと安堵したのも束の間

自分もその角を曲がったところで

思わず立ち止まった。

「っ……なっ…」

てっきり階段を上り始めていると思っていた彼が

まるで私を待ち構えていたかのように

階段下のスペースで真正面に立っていたのだ。

それも、黒いオーラを纏って。

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