アメフリレインボウ (ページ11)

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#11 raindrop ページ11

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お店の出入口から外に出て

湿っぽい夜闇の中に髙橋くんの傘が

パッと開かれたとき、ふと思い出した。

私、傘持ってないんだった。

とはいえ、相変わらずの小降りの雨。

ここから家までは歩いて10分弱。

『あれ？Aちゃん傘ないの？』

「うん、でもへーき！」

夕方より心なしか弱まった雨に

手のひらを向けて暗い空を見上げる。

「これくらいなら大丈夫だよ」

隣で私を見下ろす大きな瞳に笑いかけると

その表情が不服そうに歪んだ。

そして不意に外された視線。

『あれは？』

何かを見つけたように

髙橋くんが指差した方向を辿れば

お店の扉の隅にある傘立てに残された

1本の傘が目に入った。

「あれ？お客さんの忘れ物かな？」

『でも今日ずっと雨降ってたよ？』

髙橋くんの言う通り

バイト中雨が止むことは無かったはずで

傘を忘れるなんてことは考えにくい。

「わかんないけど、

きっとお客さんのだからとりあえず置いとこ？」

ぽつんと寂しそうに置かれているそれは

なんだか彼の、

……永瀬くんの傘に似ている気もしたけれど

万人が使うビニール傘にこれといった特徴なんてなく

彼のものであるという確証もなくて。

『じゃあ俺の傘に入っていきなよ！家まで送る』

「えっ、いいよ、大丈夫！」

『でももう暗いし風邪引いちゃ…』

「ほんとに大丈夫だから！」

言葉を遮ってまで張り上げた声が

雨音と調和しながら沈んでいく。

どうして、

こんなにも頑なに髙橋くんの厚意を断ったのか

自分でも驚くほど、わからなかった。

ただひとつ、胸の奥でゆらゆらと

その厚意を受け取ってしまってはいけないと

警鐘を鳴らされているような

得体の知れない何かを感じたのだ。

だけどその理由さえも

自分自身のことのはずなのに

やっぱりイマイチ、わからなかった。

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