#find out.6 ページ6
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『早かったんやな』
ポケットから取り出したスマホで時間を確認すると
すぐにしまって顔を上げた廉と視線が重なる。
「さっき来たとこだよ」
ここへ来てから既に20分以上は経っていたものの
廉を待っていた時間は実際あっという間だった。
『怪我は？もう大丈夫なん？』
私の身体に上から下まで視線を流したあと
顔を覗き込むように薄茶の目を向けてきた廉に
今できる精一杯の笑顔を向けて頷くと
ホッとしたように小さく息を吐いた。
「なんか変な感じするね」
『なにが？』
「こうやってわざわざ待ち合わせするの」
いつもはしないじゃん、と
不思議に思っていたことをなんとなく口にすれば
廉は一瞬間を置いたあと
いつもと変わらない調子でふっと笑った。
『たまにはええやろ？なんかおもろいやん』
よく分からないけれど
なんだか廉らしい答えに自然と頬が緩む。
たまにはいい。
新鮮で、恋人同士みたいで、ワクワク感があって……
少し前の私なら、そんな風に思えていたんだろうか。
胸の内に秘めたこの想いを廉に伝えたなら
こんな風に二人で待ち合わせをするのも
きっとこれが最初で最後になる。
廉はどんな顔をするだろう。
怒る？悲しむ？それとも……
『んじゃ行くか！』
「え？」
突然いつもよりワントーン高い声をあげた廉に
驚いて思わず顔を上げれば
廉はなんだか楽しそうに親指で駅の方向を指し示すと
くるっと向きを変えて歩き出した。
「ちょっ、廉！どこ行くの？」
慌ててその後ろ姿を追いかけて隣に並ぶ。
『いいから今日は俺に着いてこい』
やっぱり少し高めのトーンでそう言い放った廉が
いつもより明るく見えるのは気のせいだろうか。
話すのであれば、きっと早めの方がいい。
そう思いながらも躊躇いの気持ちを捨てきれないまま
話を切り出すことなんてできず
今は廉の背中に着いていくことしかできなかった。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
