#find out.13 ページ13
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その景色を何も言わずにただじっと見つめている廉。
きっともう、今しかない
そう思った。
「……廉」
『ん？』
窓の外に向いたままの顔をこちらに向けることなく
ほんの少し眉を上げながら
そっと空気に触れるように
ふんわりと優しく響いたそのたった一つの音に
胸が押しつぶされそうになるのをぐっと堪えた。
「あのね、……私ね、」
どうしても詰まってしまう言葉と震える声。
廉の顔を見ることもできない自分の情けなさに
込み上げてきた涙が溢れ出そうになったとき
『A』
再び降ってきた優しくてやわらかい声。
せめて涙がこぼれ落ちないように
ゆっくりと顔を上げた先で
廉はやっぱり窓の外の景色を眺めていた。
『ありがとうな。ほんま楽しかったわ』
ほんの少し高い声と
私の周りでは廉しか使わない関西弁。
いつもの、聞き慣れた、心地いい声。
だけど
今日、何度この横顔を見ただろう。
切なさを滲ませた、儚くて
触れたら今にも消えてしまいそうな表情。
やっぱり勘違いなんかじゃないんだよね？
どうして？
どうしてそんな顔するの？
どうして
さっきからずっと同じ場所ばかり見てるの？
声にならない想いが
胸の内をあっという間に埋め尽くしていく。
「れん……？」
絞り出すように目の前の横顔に向けた名前に
外の景色からやっと目を離した廉。
そのままゆっくりと私に視線を移すと
その微笑みを合図にするかのように
パッと顔を明るくして大きく息を吸った。
『そろそろカップルやめよか？』
口角をキュッと上げたまま
私を見据える薄茶の瞳が少し揺らいだ気がした。
そしてたった今告げられた言葉に
頭が追いつかないまま
目の前で私を映していた瞳は
薄暗くなった空の向こうへと逸らされた。
『いや、Aが嫌やって言うんやったら
まだ全然イチャイチャしてもええけど』
驚きと、疑問と、困惑と、どこからかくる痛みと
何も言えずにいる私を横目に
廉は会話をするように次々と言葉を紡いでいった。
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#find out.14 ーRenー→←#find out.12
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
