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「ねぇ授業中にあれはやめてよ、

笑っちゃったじゃん」

数学の授業が終わるとすぐに

さっき＂動く点Pマン＂を

笑ってくれたはずのAちゃんに

ちょっとだけ怒られたけど

俺はAちゃんが笑ってくれればなんでもいいし

『だって授業なにいってるか全然わかんないし

つまんないんだもん！』

池の周りをぐるぐる周る謎の兄弟も

やたらサイコロで遊ぶタカシくんも

まじで意味わからなくて、本当につまらなかった。

「だからって笑わせてこないでよ！」

そして

怒っているようで顔は綻んでいるAちゃんは

俺がずっと待っていたそれをサラッと口にした。

「てか平野くん、絵下手すぎ」

あたりまえのように

Aちゃんの口から放たれたその響きは

一気に俺の心を弾ませた。

『Aちゃん、

今初めて＂平野くん＂っていった！！』

めっちゃ嬉しい。

やばい、嬉しすぎる。

「そ、そうだっけ…？」

ジンが言ってた通り

自覚がないらしいAちゃんは首を傾げている。

『うん！今までいっかいも呼んでくれなかったよ！

俺、いつ呼んでくれんのかなって

ずっと待ってたんだもん！』

驚いたように目をパチパチさせて

俺をみつめるAちゃんをみて、ふと気づく。

みんなからはとっくに

＂紫耀＂とか＂紫耀くん＂とか呼ばれてるのに

Aちゃんに＂平野くん＂って呼ばれただけで

こんなに喜んでいる自分に。

彼女が笑っていてくれればいい

笑っていてほしい。

気づけば、いつもそう思っていた自分に。

『あ、Aちゃん！教科書ありがとね』

教科書をみせてくれたお礼をいうと

恥ずかしそうに微笑んだ彼女の姿に

俺は

Aちゃんが好きなんだと気づいた。

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