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駅に続く大きな横断歩道を前に

二人で信号待ちをしていると

ジンが思い出したように不意にその名前を口にした。

神「Aは？最近どう？」

『え？』

神「転校初日に俺に聞いてきたじゃん、

Aが人見知りかって。

嫌われてんじゃないかって心配してたんだろ？」

それならあの後すぐに解決した。

彼女は＂緊張してた＂って

照れたようにそう言った。

あの時のAちゃん、かわいかったなぁ

なんて思い出しながら、ジンにもそれを伝える。

神「は？まじかよ！なんだあいつ！

そんなキャラじゃないだろ」

そういえばジンはAちゃんに

スクールバッグ喰らったんだもんな…。

そう考えると

俺に対しては緊張してたと言った彼女の言葉に

やっぱり嬉しくなった。

『でもなんか名前で呼んでくれないんだよね』

彼女はいつも

＂あのさ＂とか＂ねぇねぇ＂と話しかけてくる。

下の名前で呼んでくれなんて言わないから

とりあえず名前を呼んでほしい。

神「ああ、大丈夫だよ。俺も最初そうだった！

本人は無自覚だったみたいだけど。

慣れたら呼んでくれるよ」

ジンの言葉に

彼女がまだ俺に慣れてくれてないんだと思い

気落ちする。

神「って言っても未だに＂神宮寺＂呼びだけどな！

みんな＂ジン＂とか

女の子で＂勇太＂呼びしてくれる子もいるのに

Aはいつまでたっても神宮寺！ひっでぇよな」

そのときの俺からすれば、それで充分羨ましかった。

＂平野＂でもいいから呼んでほしい。

いつ慣れてくれるんだろう

いつ呼んでくれるんだろう

彼女と話すたびに、そのときを待っていた。

そして、あの雨の日。

Aちゃんが教科書をみせてくれたあの日。

彼女は初めて

やっと俺のことを名前で呼んでくれた。

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