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「れん兄！花火大会行こ！」

……なんか、デジャヴやな。

ポケットで震えたスマホを取り出して

慣れた手つきでボタンを押すと

耳元で突然響いたその声は今日も騒がしかった。

「俺、お前の彼女ちゃうねんけど」

何かある度に

俺が暇やと思ってなんでも誘ってくる海人。

毎年夏休みに入ってすぐ開催される花火大会は

そういえば今日だった。

海「でもれん兄、彼女いないでしょ？」

「やかましいわ。おらんのはわざとや」

海「ね、行こーよ！」

一度言い出したらなかなか引かないのも厄介で

結局いつも押され負けしとるけど

「俺このあと予定入っとるし。

いつもみたいにお前の大好きなねーちゃん

無理やり連れてけばええやろ」

俺と同じように結局最後は弟に上手く丸め込まれて

渋々振り回されとるAの顔が浮かんで

ちょっと頬が緩んだのも束の間

海「ねーちゃん、しょう先輩と行くんだって」

思いがけないその言葉に、胸を衝かれた。

「は！？あいつらもうそこまでいっとんの！？」

海「もう一人クラスの男子いるって言ってたけど」

「はぁぁぁ？なんでぇ？せめて女子やろ！

なんで余計なもん増えとんねん！」

ようわからんけど胸がザワついて

落ち着いてはいられんかった。

海「俺もわかんないの！

ね、行くでしょ？行くしかないでしょ？」

これだけ聞いて黙ってられるほど

俺は冷静な人間ちゃうし

Aが惚れとる平野ってやつを

一度は見ときたかったし

俺は今回も、弟に負けた。

「飯食い行く約束しとった友だちに

ちょっと相談してみるわ」

嬉しそうな返事が返ってきたあと

一度切った電話を握り直すと

タレ目を細めて笑う

約束の相手を思い浮かべながら

画面上に表示させた

その名前の10桁の番号に指を翳した。

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