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#Search.32 ーRenー ページ32

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月明かりが反射して煌めく涙を

瞳いっぱいに浮かべて

俺を見据えるAの表情が歪んだ。





その姿に引き寄せられるように歩み寄り

そっと伸ばした手で

溢れ出る雫をゆっくりとすくいとる。






「なに泣いとんねん、あほ」






その涙さえ、綺麗で愛しいと思ってしまうほど

Aへの想いが大きくなっていることに気づいた。






『だって…っ……れぇぇ──ん』



「あ〜わかった、わかったから」






勢いを増して頬を伝っていく涙。

だけどその表情は、少しほっとしたようにもみえた。






「っあ〜もうっ」






そんなAがどうしようもなく愛しくて

気づけばその腕を掴んでいて

そのまま胸に引き寄せたAの身体の温もりが

じわじわと伝わってくる。






「今はなんも言わんでええから」






少し躊躇いながらも回した手で

Aの髪をそっと撫でると





一瞬動きを止めたAが

俺の胸に顔をうずめて

遠慮なしに思いっきり泣きはじめた。





自分の存在がAにとって

安心できるもので、心を許すもので

少しでも特別なもののような気がして嬉しくなった。





思わず思いっ切り抱きしめてしまいそうになった

その身体を引き離すと

胸の辺りに少し冷たい感覚が広がる。






「おい、鼻水つけんなや」






涙と鼻水で濡れた俺のシャツをみて

うっすらと笑ったAに

思わず俺も笑みがこぼれた。





だけど

そのあとAが話し出した涙の理由が

俺の知らないあいつへの想いで辛かった。






平野に告白されたこと。


でもAの一言で平野がなぜか一変したこと。


それ以来

それまでみたいに話すこともなくなったこと。


それが辛くてずっと悩んでること。






ときどき言葉に詰まったり

まだ少し鼻をすすりながら頑張って話すAの話を

最後まで黙って聞いた。





平野のよくわからん態度も

Aを傷つけとることもめっちゃムカついたけど

Aのあいつへの想いが嫌というほど伝わってきて

悔しくて情けなくて、俺が入る隙はないと思った。






「ようわからんけど

何もせんかったら今のまんまなんも変わらんやろ」






半ばヤケクソで冷たく言葉を放つ。






「そいつがそんなんやったら

Aがどうにかするしかないやん」






それでも俺は、Aを応援するしかない。






「がんばれ」






なによりも、Aが好きだから。





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megminmg1225(プロフ) - 時々名前設定が未来ちゃんになっているのを、直してくれると嬉しいです。これからも応援してます^^ (2019年12月13日 0時) (レス) id: 32c6f54378 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:N | 作成日時:2019年11月26日 22時

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