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俺には幼馴染がいた。

家が近所で、毎日のように一緒に遊んで

ひとつ上の女の子だったけど

おっちょこちょいで、負けず嫌いで、よく笑う

俺はそんな彼女のことが好きだった。

彼女が突然入院したのは

中学に上がってすぐのことだった。

なんかよくわからない病名だったけど

何万人に一人とか

そういう珍しい病気だったらしい。

お見舞いに行くと

思ったより元気で、いつもみたいに笑ってて

きっとすぐによくなるんだろうなって思いながら

それから毎日のように彼女のところへ行って

「早く元気になって、また遊ぼうね」って

いつもそう話してた。

だけどそれは

俺が高校に入ってからも変わらなかった。

目に見えない、迫りくる避けられないものに

彼女自身は、気づいていたのかもしれない。

それでも俺は、ただ会いに行くだけで

彼女に何もしてあげられないことがもどかしくて

その反動もあって、ちょっとグレ始めた。

髪は金色に染めて、制服は派手に着崩して

仲良くなったクラスのやつと学校をさぼって

一緒にバカやるのが日常で

親友になったそいつと

＂人を傷つけることはしない＂

なんて、ちょっとクサイ約束だけして

好きなことを、好きなときに、好きなだけやった。

それでも、彼女のお見舞いは欠かさなかった。

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その日も彼女に会うため

いつものように見慣れた病院の入口を抜けたとき

甲高いサイレン音と共に入ってきた救急車が

入り口の前でピタリと止まった。

同時に、駆けつける病院の先生たちと

その様子を好奇の目でみつめる人たち。

それをかき分けるように

ストレッチャーでガラガラと音を立てて

運ばれてきたその人物の姿をみて、一瞬目を疑った。

いつも一緒にいたんだから、間違いない。

一目でわかるほどに全身に傷を負って

ぐったりとして動かないそいつは

その日も会っていた、俺の親友だった。

「16歳男性。道路に飛び出した子供を庇って

車と接触。心肺停止状態です。」

呆然と立ちつくす俺の前を通り過ぎていく

無駄にリズミカルに発せられる

救急隊員の言葉だけが、頭の中に響いていた。

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