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思えば、Aちゃんの話になるとジンはよく喋る。

最初にAちゃんのことを聞いたときも

俺が転校の理由を話した帰り道

二人で信号待ちしてたときも

ジンはいつも楽しそうに

Aちゃんの話をしていた。

神「あいつは全然気づいてないけどね」

寂しげに笑うその横顔は

今まで見たことのない表情だった。

『でも、合コンめっちゃ行ってるじゃん！』

誰にでも優しくて女の子からも人気で

彼女がいるのは見たことないけど

普段から合コンのセッティングをしまくってる

ジンを思い出す。

神「ノリっていうか人集めるのが俺の役目っていうか

そういうポジションなんだよ、俺」

苦笑いを浮かべながら

吐き捨てるように言ったジンは

やっぱりいつものジンとはちょっと違った。

神「カラオケ行ったらAが好きな歌入れるし

ボウリング行ってストライクとったら

Aに見てもらいたかったなーって思うし。

他の女の子と遊んでたって

いつも考えてるのはAのことばっかよ」

知らなかった。

ジンのAちゃんへの想いは

きっと俺なんかよりずっと前から抱いていた気持ちは

嫌というほど俺の胸にグサリと突き刺さった。

神「でも」

だけど、黙り込む俺に次に届いた言葉は

全く予想もしていなかったものだった。

神「紫耀がAのこと本気で好きなら

それでいいわ」

『えっ？』

そう言って顔を上げたジンの表情は

もういつものジンのものだった。

神「紫耀には勝てねーよ。

紫耀といるときのAの顔、全然ちげーんだもん」

Aちゃんの顔？

『そうなの？全然わかんないんだけど』

神「俺には嫌というほどわかるんだよ、ばか」

ジンの言葉が嬉しかった。

Aちゃんの本当の気持ちはまだわからないけど

ジンが自分の想いを伝えたくれたことも

その上で、＂紫耀なら＂と身を引いてくれたことも

今までよくわからなかった

＂国民的彼氏＂と呼ばれる理由が

なんかわかった気がして

思わず緩んだ頬がジンに気づかれないように

両膝にそっと顔をうずめた。

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