Search (ページ13)

今日:27 hit、昨日:2 hit、合計:117,367 hit

#Search.13 ページ13

.

それからAちゃんと二人でいる時間が増えた。

放課後、音楽室で一緒に練習したり

楽器屋さんでAちゃんが

ちょこっとピアノを弾いてるのを横で眺めたり

そもそも二人で

そこまでやる必要はないとわかっていながら

なにかと口実をつけて

Aちゃんの近くにいることもあった。

そして俺自身は

その辺は上手くやってたつもりだった。

だけど

やっぱりジンは、周りをよく見ている。

.

神「おまえさぁ

最近やたらAと一緒にいるよね」

体育の授業中、他チームのバスケの試合を

二人並んで座って眺めていたとき

後ろに両手をついて座っていたジンが

膝の前で手を組みながら、ふとそんなことを言った。

俺は、ただ無言で笑い返す。

神「好きなの？」

突然のド直球すぎる質問に驚いたものの

俺の中でその答えに迷いはなかった。

『好きだよ』

即答した俺に驚いたように目を丸くしたジンが

前に向き直って小さくため息をつく。

神「俺ね、わかるんだ」

静かに口を開いたジンは

一瞬、躊躇ったように間を置いたあと

再び言葉をこぼした。

神「A、紫耀のこと好きだよ」

思わず振り向いた先のその表情を見る限り

冷やかしで言ってるわけではないらしい。

でも、そんなこと…

Aちゃんはそんな素振りみせないし

なんならずっと＂平野くん＂呼びだし

頭の中でそんなことを考えながら

まだ何も言っていない俺の心を見透かしたように

ジンは俺を一度ちらっと見てから、また続けた。

神「見てりゃわかるよ。だって俺…」

視線は合わせないまま

目の前で矢継ぎ早に回されていくボールを

ただ目で追いながら言葉を並べていく。

神「あいつのこと、ずっとみてきたんだもん」

独り言のように

呟くように吐き出されたその言葉は

床に打ちつけられるボールの音や

キュッキュッと不規則に鳴る

体育館特有の床と靴底の摩擦音や

コートを飛び交う賑やかな声に

この空間に響き渡るすべての音に

決して飲み込まれることなく

俺の胸の奥にズシリと重みを持って響いた。

.