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#memory.10 ページ10

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『がっしょうさい？』

まるで初めて聞く言葉かのように

キョトンとした顔をする

そんな平野くんにももう慣れてきた。

「そう。毎年この時期にあるの。

まぁ、そんなたいしたものじゃないよ」

前の席から回ってきたプリントを

平野くんに渡しながら適当に説明すると、早速

伴奏者と指揮者を決めるためのHRが始まった。

といっても、伴奏者の選択肢は限られている。

このクラスでその選択肢は、二択だった。

『えっ！Aちゃんピアノ弾けるの！？』

お互い＂どっちが弾いてもいい＂と言った

私と、もう1人の女の子に

先生がなぜか提案した＂男気じゃんけん＂で

勝ってしまった。

「ちょっとだけね。全然、上手とかじゃないけど」

『へぇ～すげぇ！！じゃあ俺指揮者やる！！！』

「「「え？」」」

平野くんが突然放ったハスキーボイスに

クラス中が彼の方へと振り返った。

「えっ、ちょっ、いいの？

普通そんなやりたがるものでもないと思うんだけど。

目立つし！

何もしなくてもただでさえ目立ってるし！」

そう言いつつ、内心

平野くんがやってくれたらなぁ

なんて思っている自分がいた。

『うん！やる！やりたい！』

大きな目をキラキラと輝かせながら、

『せんせー！俺指揮やりますっ！』

勢いよく右手を挙げた平野くんに

先生も、クラスのみんなも

どこか不安げな視線を送っていたような

気がしなくもないけれど

他に候補が誰もいなかったのと

なにより、なぜかやる気満々の平野くんの姿をみて

そんなに本人がやりたいなら、と

多少難航するかと思われていた＂指揮者決め＂は

呆気なくおわった。

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