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#memory.7 ページ7

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授業開始を知らせる

チャイムが鳴ろうとしていたとき

『うっわ！まじかぁ……まぁそうだよなぁ…』

突然後ろから聞こえた

独り言にしては随分大きい声に驚いて振り返ると

口をぽかんとあけて苦々しい顔をする彼の手元には

雨に濡れてヨレヨレになった教科書。

「そりゃそうなるわ…」

あの雨の中、傘も差さずに全身びしょ濡れで来た彼の

スクールバックの中身が無事なはずがない。

こんなときでも

えへへ～、なんて頭を掻きながら笑う彼。

そのびしょびしょヨレヨレの教科書を

試しにめくろうとするも

少し触れただけで今にも破れてしまいそうで

まったく使えそうになかった。

チャイムが鳴ると同時に教室に入ってきた先生に

なにやら事情を説明し、

「あほ！大事に扱え！」

と、軽くデコピンされたおでこを押さえながら

戻ってきた彼は、なぜか私の席の前で立ち止まった。

不思議に思って彼を見上げ、首を傾げると

『ってことで…すみません、見せてください』

申し訳なさそうに

だけど、いつものふにゃっとした笑顔を

私に向けてきた。

「え？」

ふと隣の席をみると

今日は欠席らしく、空いている。

そういうことか……

彼が転校してきた日、＂とりあえず＂と

ひとりだけ不自然にはみ出した

窓側の一番後ろに席を作った彼の隣には誰もいない。

筆記用具とノートだけを手に持ち

それを隣の席にポンッと置くと

ガガガッという音と共に机を寄せてきた彼が

隣にストンと座る。

その近さに

今までにない彼とのその距離に

胸の鼓動が早くなるのを感じた。

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