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#memory.34 ページ34

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花火が始まるまで、まだ時間があった。

普段は穏やかな河川敷に

今日は賑やかに並ぶ屋台の方へと三人で足を進める。

平野くんが食べたいと言ったりんご飴を買ったり

自信満々で金魚すくいに挑んだ

神宮寺のポイが秒で破れたり

なぜか瓶のラムネを

振って飲むものだと思っていたらしい平野くんが

吹き出したそれを慌てて神宮寺に向けて噴射したり

最初の緊張はいつのまにか吹っ飛んでいて

なんだかんだで楽しんでいた。

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途中でトイレに行きたいと言い出した

神宮寺を待っている間、

まだ食べ終わっていないりんご飴を齧っている

隣の平野くんの横顔を盗み見る。

彼は、何をしていても綺麗だ。

『Aちゃん』

不意に名前を呼ばれて、変に緊張する。

平野くんの顔を見上げると

彼は前を向いたまま淡々とそれを口にした。

『このまま二人で抜け出しちゃう？』

思いがけない言葉に固まる私に

平野くんが振り返って悪戯な笑みを浮かべたとき

まだ少し明るい空に大きな花火が打ち上がった。

『お～始まったね～！』

視線を空に移した平野くんのさっきの言葉が

冗談なのか本気なのかはわからないまま

次々と夜空に咲いていく花火を

彼の隣で見上げていた。

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