ハッシュタグ (ページ11)

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#memory.11 ページ11

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平野くんとの練習の日々が始まった。

『やばいね、これ。えっ、…やばいね？』

さっきからずっと難しい顔をして

譜面とにらめっこしている平野くんに

「まぁ平野くんは音符は読めなくても問題ないから

そんなに難しく考えなくて大丈夫だよ」

そう笑いかけると

まだ譜面をじーっとみつめていた平野くんが

静かに呟いた。

『めちゃくちゃハッシュタグついてるな…』

彼がみつめているのは

おそらく＂♯(シャープ)＂の記号。

「それ、シャープだよ」

私の言葉に

無言でゆっくりとこちらに顔を向けた彼が

ん？と首を傾げた。

そんな平野くんをみて

近くにあったペンを手に取り

譜面の余白に、彼が言うハッシュタグ

＂＃＂の記号を書き込む。

「ほら。ちょっと違うでしょ？」

それを覗き込んで、ん～、と唸る彼に

今度は違いを強調するように

上から線をなぞってみせる。

「なんか、向きがこう、ちょっと違う…かな？」

『ん～、わからんっ』

自分で書いててもよくわからなくなってきた私に、

『そもそもハッシュタグってなに？

なんかみんな使ってない？

あれ俺よくわからないんだけど』

さらに疑問をぶつけてくる。

「ん～、定義はよくわからないけど。

最近みんなが使ってるのは、知りたいこととか

探したいものを見つけやすくするため？かなぁ」

なんとなく感覚で適当に答えると

平野くんは、ふーん、と言いながら

もう一度譜面に目をやったあと

『お前ら双子みたいだなぁ～』

なんて、わけのわからない言葉を呟いていた。

それからも

音楽室があいていれば放課後学校に残り

時には楽器屋さんに行って

ピアノをちょこっと借りたりなんかして

平野くんと2人でいる時間が増えていくと同時に

距離もどんどん近くなっていった。

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