ハッシュタグ (ページ40)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:326,831 hit

#memory.40 ページ40

.

そうだ、忘れてた。

海「そういえば、ねーちゃんなんで一人なの？

もう解散したの？」

思い出したと同時にその海人の言葉で

そろそろ平野くんが戻ってくるはずの

さっきの場所に戻らないと、と思ったそのとき

『Aちゃん…？』

そのハスキーな声が

少し不安げに私の名前を呼んだ。

暗い夜の中、私の姿を確かめるように

ゆっくりと近づいてくる彼に視線が集まる。

『…友達？』

私の側でまばらに立つ3人を視界におさめながら

軽く頭をペコッと下げた平野くんが

緊張した面持ちで私の目の前でピタリと止まった。

「あ、うん、まぁ」

友達と、弟と、友達の友達を一瞥してから答えると

平野くんは肩の力が抜けたように

やわらかい表情に戻った。

『そっか。

なんかあったのかと思って、めっちゃ焦った』

膝に手をついて

いつものサラサラの髪を風に靡かせながら

安堵の息をついた平野くんの顔を覗き込む。

「ごめんね、急にいなくなっちゃって」

首を横に振ったあと

顔を上げた彼が優しく微笑んだとき

少し離れた場所から声が飛んできた。

廉「がっつり男に絡まれてたけどな」

『えっ？』

声のした方に勢いよく顔を向けた平野くんが

目をまん丸にして廉を見たあと

そのまま私に視線を移した。

『ほんと？大丈夫だった？ごめん、俺…』

廉の言葉に焦りだした彼に

心配かけまいと口を開こうとした瞬間

私が答えるよりも先に

またあの甲高い関西弁が飛んできた。

廉「あー、よゆーよゆー。

へっぽこすぎて相手にもならんかったわ」

振り向くと、天を仰ぎながら

勝ち誇ったような顔をして立っていた廉が

平野くんをチラッと見遣ったあと

ポケットに手を突っ込んだまま

ゆっくりと近づいてくる。

その表情は、なぜか怒っているようにも見えた。

その姿に、なんとなく不穏な空気を感じたのは

私だけじゃなかったらしい。

.