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甘えて ページ8

驚いて目を開ければ、ベッドから降りた青年と再び目が合う。彼は私を見下ろして刀を手にしていた。え、寝込みを襲つもりなの……??


「すみません。起こしましたか?」
「………眠れない?」
「はい、まァ。………至近距離に人の気配があればもしかしたらと思ったんですけどね」


青年はまたなんでもない様に言う。それがきっとなんでも無くはない事であると、私は薄々分かっていた。だって本当になんでもないなら、彼が私の一夜を買い取る必要なんてないから。


「不眠症って大変なんだね」
「………やはり目敏い人ですね、貴方は」


褒められてはいないのだろう。青年といる時、どう自分を偽ればいいのか分からなくて結果的に失言してしまう。





「……ごめん。私、もう帰ろっか?」


青年が寝ないのなら、私がここにいる意味などない。彼ももう利用価値の無くなった私が同じ空間にいるのは嫌だろう。


「こんな時間に女性を一人で帰すほど腐ってはいませんよ。僕は持ち帰った仕事をしますから貴方は寝ていてください」


驚いた事に、そんな私の予想とは違って彼はまだここにいるように促した。掛け布団を軽く整えると、彼は手ずから私の手をとって布団の中にしまわせる。


初めて触れた青年の手は思うより固くて、男の人の手だった。それでいて、いつも触れられた時に感じる不快感が無くて。私はそれに気づかない為に青年をただ見上げて……ふと既視感を感じた。基本的にベッドから他人を見上げる事なんてないはずのに___




『____A。おやすみ』




心臓が冷えると同時にどうしようもなく瞼が重くなった。思考を早く消さなければ、そうしないとならないのに。私の脳では、弱い私がアイツを見上げて甘えた声を出した。


『お兄ちゃんも一緒に寝ようよ』


大昔、私がまだ真面目に生きていた頃。今の彼がどうしても、あの日の自分に重なってしまった。寝れなくてグズっていた私を無理やりベッドに寝かせて、すっぽり掛け布団で覆ってしまう。私がそう我儘を言えば、今度はアイツ自身が私をすっぽり包んだ。そうすると私は、いつの間にか眠ってしまうのだ。
















「____剣持さんも一緒に寝ようよ」


ああ、ダメだ。私は今、とんでもない事をしようとしている。

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作品ジャンル:恋愛
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利き手(プロフ) - 仕事の休憩中に見つけて帰るまでに一気に読み切ってしまいました...きっとこれがmcやgkが出てくる物語じゃなくても大好きになっていたと思います。最初から最後まで美しくて、どこか神秘的で読んでいてすごく引き込まれる作品でした。完結おめでとうございました。 (12月29日 16時) (レス) @page49 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 素敵な作品を読ませて頂きました…最後までどこか品があって、それでいて読んでいて面白くて、展開が気になる素晴らしい話でした…本当に読めて良かったです (9月19日 2時) (レス) @page49 id: e4e98c4f7d (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後までマジェmcの素晴らしさが詰まってて、楽しく読ませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました!🥰 (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
パントマイム(プロフ) - 完結おめでとうございます! 連載当初からこっそりと追わせていただきましたが、本当に最高でした! 終始どうなるかとドキドキしっぱなしで、無事最後は3人にとって幸せな結末に辿り着いたようで本当に良かったです! 素敵な作品をありがとうございました💗 (2023年1月23日 21時) (レス) @page49 id: 664cb7fff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 霰さん» ありがとうございましす😭マジェknmcの魅力をもっと繊細にかけるように頑張ります! (2022年12月25日 19時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴた | 作成日時:2022年11月2日 20時

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