承諾 ページ4
青年は言いたい事が言い終わったのか、質の良いティーカップに口を付けた。いや、私の方はまだ説明が足りないのだけれど……幾ら頭を回そうとこの青年が私を買いたがる理由が分からない。分からないままの人間と契約するのは馬鹿のする事だ。私の商品は身体である。それを傷つけられる可能性があるうちは、そう易々と首を縦には振れなかった。
｢……依頼内容をお聞きしても？｣
｢僕と一夜を過ごす、それだけです｣
｢……………童貞ですか？｣
｢ぶん殴りますよ｣
間髪入れずに怒られた。どうやらこの手の話題はNGらしい。
この依頼が本気というなら、青年は客ということになる。一応客には客なりの対応って言うものがあって、敬語もその一つだ。最初から言ってくれたら敬語で喋ったのに、見誤った。
｢あの、お言葉ですけど＿＿＿｣
｢僕に敬語は結構です。貴方にそれは望んでいません｣
じゃあ何を望んでるんだよ、身体か。一瞬脳がバグった。私が今まで相手にして来たカモとは根本的に毛色が違って、どうしても対応に戸惑ってしまう。中年なら何となく分かるけど、この子は多分成人もしてないし遊び慣れているワケでもない。
私みたいな女を相手にするのは、少々彼は若すぎる。その若さで自分の時間を援交で消費するのは、余計なお世話なのかも知れないが………非常に勿体ないと思った。だって彼は、こんなに美しいのに。
…………何考えてるんだろ。
｢………どうして、私に？｣
最後に一つだけ聞いておくことにした。コレで何となくとか答えたら、断ろうって、思ったのに。
｢貴方が、金以外信用していないって顔していたから｣
彼は私を真っ直ぐに見据えてそう言った。間も開けずに、私の全てを見透かしたような顔で、声で、瞳で。その時、私はやっと気がついたのだ。彼と私は、きっと根本的な所で同類である事に。
｢貴方の一夜、買い取ります｣
｢まいどあり｣
今度は私が間を開けずに答える番だった。やっぱりね、そんな意味を込めてフ、と彼は笑った。結局私は彼の手の平で転がされて、暇つぶしに眺められていたのだろう。
それでも、悪くないのかも知れない。初めて、客にそんな事を思った。…………私は思ってしまったのだ。それがきっと破滅への道のりだと分かっていながらも。
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利き手(プロフ) - 仕事の休憩中に見つけて帰るまでに一気に読み切ってしまいました...きっとこれがmcやgkが出てくる物語じゃなくても大好きになっていたと思います。最初から最後まで美しくて、どこか神秘的で読んでいてすごく引き込まれる作品でした。完結おめでとうございました。 (12月29日 16時) (
レス) @page49 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 素敵な作品を読ませて頂きました…最後までどこか品があって、それでいて読んでいて面白くて、展開が気になる素晴らしい話でした…本当に読めて良かったです (9月19日 2時) (レス) @page49 id: e4e98c4f7d (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後までマジェmcの素晴らしさが詰まってて、楽しく読ませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました！🥰 (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
パントマイム(プロフ) - 完結おめでとうございます！ 連載当初からこっそりと追わせていただきましたが、本当に最高でした！ 終始どうなるかとドキドキしっぱなしで、無事最後は3人にとって幸せな結末に辿り着いたようで本当に良かったです！ 素敵な作品をありがとうございました💗 (2023年1月23日 21時) (レス) @page49 id: 664cb7fff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 霰さん» ありがとうございましす😭マジェknmcの魅力をもっと繊細にかけるように頑張ります！ (2022年12月25日 19時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2022年11月2日 20時
