腹水、割れた盆 ページ28
ガク君のギャンブル癖は相変わらずだった。賭け師の商売は中々に順調なようで、金の羽振りは予想よりずっと良い。
「よっしゃ勝った!!!どう?俺カッコイイ?」
「かっこいいかっこいい」
「それ本当に思ってる?」
「思ってるよ」
ガク君は客としてみればかなり良い太客である。ちょっとしただる絡みも私が本気でウザがらない範囲までしか踏み込まず、私に触れる時は必ず許可をとる。どうやら線引があるらしい。
「相変わらずだねガク君は」
「そうかぁ?」
「うん。なんにも変わってない」
変わったのは私だけ。
「……Aちゃんは綺麗になったな」
「え、なに?急にどしたの」
「俺今のAちゃんも好きだぜ」
…………本当、なに。言われ慣れているのに熱くなる頬を誤魔化す為にガク君の手を引いて立ち上がらせる。バーを指させばにんまり笑って、今度はガク君が私の手を引いた。
「ノンアルコール限定な!」
「良いけどなんで?」
「せっかく二人で飲むならもっと賑やかな所がいいじゃん」
「……ふーん」
「分かりやすいなァAちゃんは!」
ガク君の手が私の髪をなぞった。そのまま両手で頬を包み二、三度そのやわらかさを堪能した後……やらかしたと言わんばかりの表情で固まる。瞳孔ガン開きなの面白いから止めて欲しい。
「………怒ってないよ、別に」
「いやコレは俺の問題……!」
頭を抱えたガク君。……本当に。
「仕方がないなァ」
「へ、」
俯くガク君の両頬を包んで上を向かせる。彼と同じように頬のやわさを堪能して、パッと手を離した。
「これでおあいこって事で」
「………もっかい触っていい?」
「あはは、別に許可なんか取らなくていいのに。今の私はガク君の物なんだから、何したって文句言わないし、して欲しい事があるならなんだって叶えてあげるよ」
私はてっきり満点の笑顔で喜んでくれるとばかり思っていたのだけれど……水晶体に反射するガク君の顔は反対に曇っていく。
………なんで、ガク君がそんな傷ついたみたいな顔するの。
驚いて思わずガク君に伸ばした手を躱されて、彼は一定の距離を空けて私を見下ろす。その瞳に感情は無かった。
「………じゃあ君は、もし俺が抱かせろって言ったら、それに応じて簡単に抱かせるのか?」
____うん、そう言うなら。
するとガク君はもっと傷ついたみたいな顔をして、私の腕を乱暴に引いた。私がガク君と呼びかけても、彼は反応せずにただ前だけを向いていた。
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利き手(プロフ) - 仕事の休憩中に見つけて帰るまでに一気に読み切ってしまいました...きっとこれがmcやgkが出てくる物語じゃなくても大好きになっていたと思います。最初から最後まで美しくて、どこか神秘的で読んでいてすごく引き込まれる作品でした。完結おめでとうございました。 (12月29日 16時) (レス) @page49 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 素敵な作品を読ませて頂きました…最後までどこか品があって、それでいて読んでいて面白くて、展開が気になる素晴らしい話でした…本当に読めて良かったです (9月19日 2時) (レス) @page49 id: e4e98c4f7d (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後までマジェmcの素晴らしさが詰まってて、楽しく読ませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました!🥰 (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
パントマイム(プロフ) - 完結おめでとうございます! 連載当初からこっそりと追わせていただきましたが、本当に最高でした! 終始どうなるかとドキドキしっぱなしで、無事最後は3人にとって幸せな結末に辿り着いたようで本当に良かったです! 素敵な作品をありがとうございました💗 (2023年1月23日 21時) (レス) @page49 id: 664cb7fff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 霰さん» ありがとうございましす😭マジェknmcの魅力をもっと繊細にかけるように頑張ります! (2022年12月25日 19時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴた | 作成日時:2022年11月2日 20時