ジェララ side：K ページ25
｢……だよ、…ク君｣
人はストレスを抱えると寝言が増えるらしい。殆ど聞こえない寝息に混ざった音で、僕の目は覚めた。少し目線を上に向ければ、閉ざされた瞼と微かに開いた口。肌触りの良いナイトウェアの生地が彼女の呼吸に合わせて上下して、僕の口元を擽った。
｢………ガ、くん……が、たら……よ｣
ぎゅう、僕を包む腕に力が籠った。彼女の口元が僕の髪に埋まる感覚。ゼロ距離まで縮まった身体同士は一部の隙間もなく、トクンと拍動する心臓と一緒に声帯が震える振動まで僕に直接届いた。
｢＿＿＿＿もっとなでて……ガクくん｣
僕の後頭部を支える手は、冷たい。
カーテンから漏れる陽の光に今の時刻を大凡で予想する。今日は何の予定もない休日で何時に起きようと決めてもいなかったから、僕はスマホを手に取ろうとして止めた。彼女がいなければいつ眠れるかも分からない日々を思い返しながら目を閉じる。
剣持刀也には決して隙などあってはならない。あってはならないから、僕は彼女と寝るしかないのだ。他の誰かではダメだったから、この触れ合いを来栖Aに依存するしかない。どうしてかはいつまでも分からない、知る必要もない。
｢…………もっと、｣
彼女はガク君を求めるようにきゅうと僕を引き寄せる。
怯えた瞳、信じられないと見開かれた瞳、大粒の涙を零す瞳。親を探す迷子のような、ガク君だけを見つめる瞳を、僕は頭で思い描いた。そして、飄々とした顔のガク君。
『知り合いだったんですか？』
『そっちこそ。世間って狭いよなァ』
『一体何繋がりですか』
『…………お腹空いたしどっか食べに行きません？』
彼は僕に何も話さなかった。一線引かれた、僕はそう思った。彼は、僕がガク君の知るAさんを知る事を良しとしなかった。
だから僕はわざと彼女にガク君の話題を振った。我慢がきかなかった。そして、彼女の心に無理やり侵入しようとした成果は。彼女にとってガク君は特別で誰にも触れさせたくない存在で、ガク君にとってもそうである事を。
彼らは、互いを唯一無二と認識していて、二人で完結した世界にいたのだ。
｢…………けんもちさん？｣
目を開ける。彼女の瞼は閉じたままだった。それ以上彼女が何かを言う事もなかったのに、微かにしか聞こえない寝息に耳をそばだて続ける。
僕の心臓は、もう眠れないとばかりに鼓動を繰り返していた。
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利き手(プロフ) - 仕事の休憩中に見つけて帰るまでに一気に読み切ってしまいました...きっとこれがmcやgkが出てくる物語じゃなくても大好きになっていたと思います。最初から最後まで美しくて、どこか神秘的で読んでいてすごく引き込まれる作品でした。完結おめでとうございました。 (12月29日 16時) (
レス) @page49 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 素敵な作品を読ませて頂きました…最後までどこか品があって、それでいて読んでいて面白くて、展開が気になる素晴らしい話でした…本当に読めて良かったです (9月19日 2時) (レス) @page49 id: e4e98c4f7d (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後までマジェmcの素晴らしさが詰まってて、楽しく読ませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました！🥰 (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
パントマイム(プロフ) - 完結おめでとうございます！ 連載当初からこっそりと追わせていただきましたが、本当に最高でした！ 終始どうなるかとドキドキしっぱなしで、無事最後は3人にとって幸せな結末に辿り着いたようで本当に良かったです！ 素敵な作品をありがとうございました💗 (2023年1月23日 21時) (レス) @page49 id: 664cb7fff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 霰さん» ありがとうございましす😭マジェknmcの魅力をもっと繊細にかけるように頑張ります！ (2022年12月25日 19時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2022年11月2日 20時
