大好き ページ20
「貴方もこういうのお好きなんですね」
銀色に輝くのは硬貨じゃなくて小さな玉、それも一箱にぎっしり詰めて私は目の前の光景を眺めている。禁煙のはずなのに煙草の香りがして、背中を丸めて台を見つめる大人に混ざって私もそこにいた。そして、……耳をつんざくような騒音の中で、綺麗な音が鼓膜を揺らす。
「…………え、?」
「まァそんな気はしていましたけど」
「え、な、ぁんで?……未成年……」
「……見た目だけで決めつけないでください」
目も口も開きっぱなしである。何度視界をリセットしても変わらない光景に目眩がした。……明らかにこの場から浮いている青年……剣持さんは、確かに私の目の前に存在している。待って頭が追いつかない。
「今日はお仕事されてないんですか?」
「そう毎日は働けないけど……?………剣持さん、出口ならあっちだから早く出た方がいいよ。案内するから」
「しなくていいです」
………そういえば。彼は別に弱い子どもじゃない。
「……剣持さんこういうとこ似合わないね」
「ハ?」
「じゃあバイバイ」
くるりと背を向けてパチンコに戻る。中々来ないフィーバータイムを待ち望みながら、私は彼を頭から追い出して目の前のうるさいほど艶やかな画面を見つめた。
「……………競馬にすれば良かったなァ」
いつもは脳が溶けるほど興奮するフィーバーに心が着いてこなくてもうダメだと思った。私の心を掻き乱すのはいつも青年である。何故自分以外の人間に脳のリソースを割くのか、その答えをたどり着く前に潰さなければ。
踏み潰しすり潰し原型も無くなるほどドロドロにして、ゴミ溜めにまとめてポイだ。
『君のその気持ちは無駄じゃなくて全部大切な物だぜ。吐き出したいなら俺がいつでも手伝ってやるからさ、おいで。そんでもって、もっと人生楽しもう!ほら、せーので………ピース!!!』
___あれも嘘だったなぁ。
どうして私の周りには嘘つきしかいないんだろう。私がこんなどうしようもない人間だから?私が馬鹿だから?弱いから?
「………ガク君のばァか」
_____エッ!?久々に聞く第一声がそれって結構傷つくんだけど………
幻聴がした。それでも幻聴だと認めきれない脳が勝手に司令を出して顔を上げさせて___目を見開く。
「もしかして俺がいなくて寂しかった?」
視界に映るのはあの美しい青年………の隣でヘラヘラ笑う、
伏見ガク。私の人生を変えた男だった。
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利き手(プロフ) - 仕事の休憩中に見つけて帰るまでに一気に読み切ってしまいました...きっとこれがmcやgkが出てくる物語じゃなくても大好きになっていたと思います。最初から最後まで美しくて、どこか神秘的で読んでいてすごく引き込まれる作品でした。完結おめでとうございました。 (12月29日 16時) (レス) @page49 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 素敵な作品を読ませて頂きました…最後までどこか品があって、それでいて読んでいて面白くて、展開が気になる素晴らしい話でした…本当に読めて良かったです (9月19日 2時) (レス) @page49 id: e4e98c4f7d (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後までマジェmcの素晴らしさが詰まってて、楽しく読ませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました!🥰 (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
パントマイム(プロフ) - 完結おめでとうございます! 連載当初からこっそりと追わせていただきましたが、本当に最高でした! 終始どうなるかとドキドキしっぱなしで、無事最後は3人にとって幸せな結末に辿り着いたようで本当に良かったです! 素敵な作品をありがとうございました💗 (2023年1月23日 21時) (レス) @page49 id: 664cb7fff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 霰さん» ありがとうございましす😭マジェknmcの魅力をもっと繊細にかけるように頑張ります! (2022年12月25日 19時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴた | 作成日時:2022年11月2日 20時