愛はどこまでも ページ34
あぁ、懐かしいな。
昔もこんな風に
私が不思議に思うことがあれば、何だって優しい口調で教えてくれたんだっけ。
「だからあのカケラを使えば、忘れたくない記憶を元に過去を辿れたんだよ。だけど、Aの大切な記憶が消えてしまうことだけは避けられなかった。」
「…どうして？」
「記憶を願い、記憶を辿った代償として払われるのもまた記憶。だけどね、A。記憶は、夢のようなものなのよ。」
あぁ、心地良い。
私を包む深い愛が
こんなにもあたたかい。
「夢？」
「そう。だから記憶が消えて何も思い出せなくなっても、きっとそれはどこかで眠っている。」
「…どこ、かで。」
だけどその愛は、大きすぎるから
私のことを手放して、包むことをやめてしまったって
ずっとそこに在ってくれるの。
「さぁ、A。ここに来るのは、まだ早いでしょ。」
「でもっ…嫌だ。私、まだ帰りたくない。」
「ダメよ、生きなさい。あなたは必ず、幸せになれるわ。」
知らない人との会話、病院での注射、初めての学校。
そんな、勇気を振り絞らなければならなかった時に
少し無理に背中を押したって
ずっと私を見守ってくれていたのと同じように。
「ほら、思い出して？あなたのことを大切にしてくれるお友達のこと。学校のこと。先生のこと。」
ぐずる私に向かって、優しく、穏やかに説いてくれたのと
同じように。
「あなたの命を追って、何度も何度も世界を変えた、あの子のこと。」
私を抱くその腕が、そっと解けて
代わりに私の背中を、ゆっくりと押した。
「優しい声だったでしょう。優しい温度だったでしょう。」
その声に
次々と色鮮やかな情景が、身体の内側に流れ込んでくる。
「あなたが一番、好きな色。あなたが一番、大好きな音。」
あぁ、そうだ。
あの子の色が、私は心の底から好きで
あの子の音が、何よりも愛しかった。
「たくさんの人を愛して、たくさんの人に愛されて、目一杯に生きなさい。…だからそろそろ、目を覚ますの。ね？」
「……うん…。」
少しずつもやがかかって、見えなくなってしまうその二人に
私は最後に一雫だけ、涙を零した。
だけどもう、二人の手は届かないから
今度はちゃんと、自分の手でこれを拭うよ。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
