何度でも ページ31
迫り来るそのトラックには
今は見て見ぬフリをしていよう。
いつか、記憶の彼方で誰かがこうしたように。
私にとって命よりも大切な誰かがしたのと、同じように。
あなたが自分の命を棄ててまでしたことを
私はどうしてもなぞりたい。
運命は、私には変えられない。
だから私は、たった一度だけ
あなたの笑顔が見たかった。
そして、笑ってくれた。泣いてくれた。
喜んでくれた。恋を知ってくれた。
ね。私、もう満足なの。
「…うっ……。」
呆然とそこに立ち尽くす幼い子どもの背中を
ありったけの力を込めて、押した。
地面に叩きつけられる自分の身体。
遠くで聞こえる誰かの悲鳴。
目の前で回り続けた、タイヤ。
あぁ____________私、ここで死ぬの。
ねぇ。
私も、愛してるわ。
あなたは私の、愛しのカミサマ。
その深すぎる優しさで
私から全てを奪って幸せにしたカミサマ。
あぁ、遅かったなぁ。
今更忙しなく回り出した走馬灯の全てを見る時間は、もうないみたい。
だからせめて、あの言葉を。
過去の私が、何度も言った言葉を
なぞらせて。
___________好きよ。
ほら、言ったじゃない。
何度世界が変わっても
私は何度でも、
あなたに恋をするの。
“患者の病態が急変しました。今すぐ担当医を__________。”
あぁ。
“至急、投薬を開始してください。早く、急いで！”
あの日私は、独りぼっちの病室の中で
天国へ行こうとしたの。
この世界に、野坂くんはいない。
お父さんもお母さんもいない。
だけど空の上には皆んながいるから
私は喜んで死ねる。
ゆっくりと遠のいていく意識の中で
痛い注射からも、長すぎる点滴からももう解放されるんだって
やっと野坂くんを笑わせられるんだって
私はすごく、嬉しかったの。
あの羊が、現れるまでは。
“やれやれですねぇ。”
そんな声を、聞くまでは。
“あ…あなたは誰？”
“私に名乗る名などありません。…まぁ、Xとでも呼んでください。Xは、未知を表す文字ですから。”
不思議と止まった時の中で、羊は言った。
“私は現世とあの世の狭間の住民で、もうすぐ死ぬ人の元に訪れるのです。孤独や後悔、憎しみ、苦しみ。それらを捨てきれずにこちらに来ようとしている人間を、ちゃんと成仏させるために。”
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
