自己暗示 ページ21
「それって、ウチの学校からスペインのクラブに行く選手が出るってことでしょ？わぁ…すごいな。」
そんな私の心情を知る由もなく
“ノサカくんがすごい” というたった一つの話題で、
みんなは暫く盛り上がっているようだった。
「まだ受け入れも拒否も正式にはしてないらしいけどね。まぁ俺だったら、絶対行くけどなぁ。」
「そりゃ行くでしょ。スペインのクラブに呼ばれるとか、街中で急にスカウトされて大監督の映画の主役に抜擢されるようなもんじゃん。二度とない機会だろうし行かなきゃ勿体無いよ。」
「ははっ、瀬尾っちの例えはいつも分かりにくいな。」
どう、しよう。
笑わなきゃ。
明るくならなきゃ。
そう思えば思うほど、
こんなにみんな楽しそうなのに
私だけ笑うことができない。
「まぁまぁ、まだ噂だけ…A？」
「どーした。箸が進んでないぞー。」
彼がいなくなる。
彼が、いなくなる。
別に、毎日話をしていたわけではないし
わざわざこうして集まって話をするような仲でもないけれど
そうか__________彼は、いなくなるのか。
「…はは、何でもない。ちょっとぼーっとしてただけ。」
「まぁAはクラス違うし、野坂のことあんま知らないもんな。」
「まぁね。でもすごいね、ノサカくん。」
あの違和感から解放されるのなら、いいじゃないか。
もう私は、よく分からない胸の痛みに涙を流すことも
不可思議な違和感に頭を悩ませることも、しなくて済むのだから。
いいんだ。
これでいいんだ。
これが、いいんだ。
そう言い聞かせる内に、
心の表面だけがスッと軽くなって
「瀬尾くん、クリームパンありがとね。美味しかった。あと、サイダーも。」
「おうっ！お安い御用よ。」
「じゃあA、放課後パンケーキね！よろしく。」
彼らと別れるときには
大分楽に笑えるようになっていた。
その軽くなった思いは
「あ…ノサカくん。」
この人を前にしても、変わらぬままだ。
いなくなっていい。
いなくなればいい。
そう念じてかけた自己暗示が、
ずっと解けなければ
それでいい。
「あぁ、君か。」
翌日、理由も無く訪れた屋上のドアの向こうに
たった一人で、グラウンドを見下ろす彼を見つけた。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
