ふわふわした子 ページ15
天パにこっそりと混ざる寝癖が、彼らしさを十二分に表している。
「ははっ冷た！気持ちいいね。」
土手を下って、浅い川に足を入れる。
高すぎる空気の温度とは真逆の、冷たくて新鮮な温度が
私の体を少しずつ冷やした。
「でしょ？」
シャツとズボンの裾を捲った彼は、私の斜め前でそう言って笑う。
「わっ…やめてよ！もうっ！」
そうかと思えば、飛んでくるのは冷たい水しぶきで
服にも顔にも、容赦なくそれが降りかかった。
「仕返し！」
「うわっ！ははっ、すげー濡れた。」
彼の白シャツに浮かび上がった無数のシミが、言わずともそれを物語っている。
瀬尾くんは、本当にふわふわした男の子だった。
だから一見、掴みどころがないのだけど
本当はいつだって私が掴みやすい場所にいてくれる。
なんだか、私をまるごと書き写したんじゃないかというくらい、私と同じ波長で彼は生きていて
それはそれは、心地良くて。
「A。今度二人で、出かけようよ。」
だからこんな誘いすら、あまりにも自然だった。
思わずすぐに、答えてしまいそうになるくらいに。
「…二人で？」
「うん。それともまた誰か、誘う？」
「いやー…えっと…。」
「はは、ごめん。困らせちゃった。」
「ち、違うの。私、男の子と二人で出掛けたこと…ないから。なんか…ごめん。」
こうして私が戸惑った時は
「そっか。まぁまた花火のメンツで、どっか行こーぜ。」
ただそれだけを言って、静かに引く。
こんな、海岸の波みたいな瀬尾くんだから
「うん、行こうね。」
私はやっぱり、安心してしまうのかもしれない。
「よっ！これで全員集合？」
「違うよ。瀬尾っちがいないじゃん。」
「いるよ！居ないことにするなこのヤロっ。」
彼の言った通り、そのメンバーで再び集まってみれば
それは相も変わらず賑やかで、和やかで
私はこの時間が好きだった。
「てっちゃん、バケツとライター持ってきた？」
「おう！バッチリよ。」
「手持ち花火はこれでーす！一人二百円ね。」
「見て、蚊取り線香持ってきた。うち、ナイスすぎない？」
きっとみんな、それぞれ悩み事があったり
うまく行かないことがあったり
何かを失ったり
恋をしたり、しているんだろうけど
それでもこうして集まって、笑い合える瞬間があるというのは
とてつもなく幸せなことだ。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
