自分の傘 ページ27
私の言葉に、彼はパッと顔を上げて
その目をこれでもかというほどに輝かせる。
「えっ、本当に？」
「うん。」
「本当…？」
「はは、本当だよ。」
「やっ……たぁ！マジで嬉しい！」
なんだか、この百点満点な笑顔だけで
もうお腹がいっぱいなくらいだ。
これだけ心の中を表面上に全力で透かしてくれる彼だから
今度のお出かけも、きっと楽しい時間になる。
「じゃあ今週の日曜の午後一時に、Aの家まで迎えに行くからなっ！」
「分かった、待ってるね。」
“今週の日曜の、夕方の便なんだ。”
記憶の奥で誰かが言った言葉を
無理やり聞かなかったことにするかのように
「ありがとう、瀬尾くん。」
私は笑ってそう言った。
「…お待たせ！瀬尾くん！」
こういう時、どんな服装を着ていけばいいか分からなくて迷っていたら
ほんの少しだけ一時をまわってしまった。
「A。ははっなんか、お互い制服じゃないから変な感じだね。」
「ね。じゃあ…行こっか。」
彼が学校から、いなくなるこの日
彼がこの街から、いなくなるこの日
私は瀬尾くんと、デートをする。
「そうだ、傘持ってった方がいいよ。今日午後から雨だって。」
「あ…そうなの？分かった、ちょっと待ってて。」
ノサカくんがいなくなったら
雨が降ってももう、私は傘を忘れない。
こうしてちゃんと、自分の傘を持っていくんだ。
「よし、じゃ行くぞ。」
「うん！」
そして瀬尾くん達とまた、ただ笑顔で楽しい毎日を送っていくんだ。
「なぁ、今度の文化祭、そっちのクラスは何やるの？」
「んーと…縁日だったかな。」
「縁日かぁ、いいね。俺らはお化け屋敷！遊びに来てよ。」
「えぇ、やだよ。お化け屋敷とかほんっとに無理。」
ノサカくんがいたら、
彼はどんなお化けで、どんな驚かし方をして、どんな風に文化祭を周るだろうか。
西蔭くんとまた、ずっと一緒にいるのだろうか。
「あと十分くらいで始まるね。何か買う？」
「うん。ポップコーン食べたい！」
「キャラメルと塩、どっちがいい？」
彼は本当に、海外に行ったまま
もう暫く帰って来ないのだろうか。
そしたら西蔭くんは、誰と過ごすことになるのだろう。
私の心が折れた時、誰が見つけてくれるのだろう。
彼がいなくなるということはつまり、
私は何を失うということになるのだろう_______。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
