叶わない ページ44
この、辛いくらいに幸せな気持ちも
君への恋心も
僕は隠し通さなければならない。
「ねぇってば。」
「…何。」
「ははっ、やっと反応してくれた。どうしていっつも私のこと無視するの？」
「じゃあ逆に、何故君はいつも僕に話しかけるの。」
澄ました顔で、机上に出ていたノートを閉じながら僕は聞いた。
気になるから。仲良くなりたいから。笑ってほしいから。好きだから。
僕が知っている“君”の答えは
きっと一つも出てきやしない。
「んー…何となくだよ。じゃあね、野坂くん。」
_________ほら、ね。
この世界の君は
僕を好きではないし
僕に恋をしてもいないし
この先、君が僕を好いてくれるという保証だってどこにもない。
何故君が僕に気を引かれたのかは知らないが
僕はその時とは全く違う世界線で、全く違う価値観で、全く違うもののために“生きて”いるのだ。
それに今の君は、僕が死んだ世界から来た君ではないから
君の世界線や価値観や生きる理由も
あの時とは全くもって違うんだろ。
僕が時間や世界を跨いでまでズルズルと引きずってきたこの想いが叶うのは、当然のことだと思っていた。
この世界でも、やっぱり雷門中が優勝したように。
やっぱり、僕がキャプテンに任命されたように。
やっぱり、僕の頭の中に腫瘍が出来たように。
だけど違った。
よくよく考えれば、当たり前のことなのに
僕は君のこととなると、どうも頭が弱くて。
君は僕を好きじゃない。
君は僕を、好きにならない。
多分、これが、そう。
この世界での、変えられない事実だ。
「____________グリッド・オメガ。」
目の前で巻き起こる僕色の旋風も
耳を塞ぎたくなるほど痛々しい呻き声も
頭の奥で疼く忌々しい腫瘍も
「あれがあなたのサッカーなの？」
違う世界で
僕の本当のサッカーを知っていた人にかけられるこの言葉も
全部、全部。
“野坂くん。”
全部。
消えてしまったら、よかったのに。
“野坂くんのことが、好き。”
あの恥じらいも
あの笑顔も
あの涙も全部
僕のものにはもうならないのに。
「弾む美味しさ…ぴょんぴょんぴょん、だね。」
軽くふざけて言った言葉に、泣けた。
“野坂くんもいつかぴょんぴょんしちゃう時が、くるよ！”
西蔭の前では必死に笑顔を作りながら
彼がいないところで、その甘さに泣いた。
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ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
