夜更かし ページ5
「僕の部屋で食べようか。」
「いいの？」
「うん。」
別に君の部屋に行っても良かったのだけど、6階の部屋に行くよりも2階の部屋で事を済ませる方が幾分容易だろう。
部屋に入ると、君は早速はしゃいで袋の中から買ってきたものを取り出し、机の上に並べた。
しかし、“お菓子を食べて夜更かしをする”という君の願望を叶えるにはまだ時間が早いはずだ。
「お風呂、入ってくれば。」
だから、僕はそう提案した。
そして君もまた、僕の提案をのむらしい。
わざとらしく「お言葉に甘えて」などと格式張った言葉を一つだけ残し、君は浴室へと消えていった。
君の姿がこの部屋から消えても、残された色とりどりのお菓子のパッケージが主張激しく部屋を彩っていた。
「はい！野坂くん。」
君に続いて僕も入浴を済ませると、君はお茶を買った僕のグラスにわざわざジュースを注いだ。
「乾杯！」
「…うん。」
促されるままに君と合わせたグラスから
涼しげな高音が小さく響いた。
君の真似をして僕も一口飲み物を口に含むと、
甘酸っぱいその冷たさが火照った体の隅々まで行き届いて
中々に心地よかった。
それからというもの、僕はただひたすら君の言う通りに動いているだけだった。
君が持参したトランプでゲームをしたり、言われるがままにダウンロードした携帯のゲームアプリで君と対戦をしたり、食べ物の名前限定でしりとりをしたりだ。
何をやっても僕が勝ってしまうから、「私が勝つまでやる」という何とも利己的なルールに基づいて随分と長い間ゲームをしていた。
「野坂くん、眠い？」
「別に。」
夜中の3時をまわろうかと言うところで、君は僕にそう尋ねた。
正直全く眠くないと言えば嘘になるが、朝まで遊びたいと言った君を無視して悠々と寝られるほど強情でもない。
「じゃあ、アイス食べよ！」
「うん。」
僕は君の仰せのままに、アイスを出すためキッチンへと歩いた。
「どっち？」
「スイカのやつ！」
君はまた、意気揚々とそう答えた。
随分と体力のあることだ。
アイスを手渡すと、君は短くお礼を言って早速その先端をかじった。
スイカを模した真っ赤なアイスが、君によく似合っている。
あの日、病室でスイカをかじっていた時の君と目の前の君が脳裏で重なって
その光景に特別何か感慨深くなったというわけではないけれど
僕はやっぱり、スイカが好きだと思った。
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ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
