想い合い ページ23
「ねえ。」
僕がうとうとと眠りに落ちる前
君は「まぁ例えばの話でしょ」と僕の至極真面目な言葉をはぐらかしたけれど
やっぱり僕は
それをもしもの話で終わらせたくはない。
「さっき、言い忘れたんだけど。」
「何？」
「君の例え話が嘘だろうと本当だろうと、僕の言葉は変わらないよ。」
「…はは、何それ。どういう…。」
「そのままの意味だ。」
僕はもう、君のその問いに答えを濁さない。
逃げることはいつでもできるけれど
君と向き合うことは今しかできないから。
「やめてよ。」
「どうして。」
「嫌だよ。だって…。」
だって。
君はもうすぐ消えてしまうから。
今更幸せを掴んだところで
絶対的な終わりが見えているから。
幸せはそのまま、不幸せへと顔を変えるから。
そんなことは、分かっている。
「怖がらなくていい。」
君のはかりしれない恐怖の一端を背負う責任と覚悟を
今やっと、自覚したところだ。
「明日のことすら考える間もないほどに、君の今を僕が満たすよ。」
“一度は恋人と過ごしてみたい”という君の願いを叶えたかったという気持ちも、半分くらいはあるかもしれない。
だけどもう半分は
ただ真っ直ぐで純粋な、僕の感情だ。
「はは…もう、充分だよ。」
「まだ足りない。」
「どうしちゃったの、野坂くん。熱でもあるの。」
「僕は至って真面目だ。」
「真面目って。寝ぼけておかしくなってる？もう夜遅いもんね、そろそろ私も…。」
「A。」
恐らく、君の名前を呼ぶということは
明らかに動揺を浮かべながら笑って誤魔化す君を
一瞬で黙らせる魔法だ。
「幸せになることを、怖がらないで。」
「…野坂くんだって、怖がってたくせに。」
「あぁ、そうだよ。だけど君を僕の同類にならせるわけにはいかない。」
僕はいつから、こんなにも饒舌に話すようになったのだろうか。
考えれば考えるほど不思議だ。
「君が好き」という僕の中の気持ちの正体だって、未だにハッキリとは掴めていない。
だけど分からないまま突き進んでも良いことだって
たまにはあるだろう。
「それで、君は僕をどう思っているの。例えばの話は、抜きで。」
「…好きだよ。バカ。」
ほら、こんな風に
理屈や論理が分からなくたって
僕らは今、満たされたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 240人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
