最後の ページ7
「野坂くん！おはよう！」
最後だ。
これが、最後の “おはよう” だ。
「決勝戦、頑張ってね。」
これが、最後の “頑張ってね” だ。
今日は何をあげようかと迷ったけれど、どうせ最後だ。
出し惜しみしたって仕方ないじゃないか。
チョコも飴も、キャラメルもマシュマロも、全部彼に渡した。
「試合終わったら、チームのみんなでパーっと食べてよ！」
そのありったけの幸せを見つめて、彼は言う。
「…君はどうして僕らのサッカーに何も言わないんだ。」
「え？」
その瞳は、やっぱり少し陰っていた。
そんな顔しないでよ、野坂くん。
私と会えるの、最後だよ。
彼に言えるはずもないことを頭の中で思う一方で、彼に言わなければならないことを考えていた。
グリッド・オメガは半ば反則技だ。
あの技によって多くの選手が負傷し、いくつものチームを途中棄権にまで追い込んできたのは紛れもない事実なのだから。
清く正しく美しい技とは、とても言えないし
言ってしまえばスポーツマンシップの欠片もない。
「うーん。だってさ。」
だけど私は
もうこれ以上、自分のような思いをほかの子供達が抱えない世界を作りたいという彼の強い想いがあったことを知っている。
そして、その想いと「技を出したくない」という彼の隠れた本心が葛藤していたことも知っている。
フィールドの上から立ち去ってもなお苦しそうな彼の表情が、いつだってそれを物語ってきたじゃないか。
「野坂くんには、やらなきゃいけないことがあったんでしょ？」
月光エレクトロニクスに無理矢理サッカーをやらされて、多くの選手に負傷を負わせた。
だから何だ。
周りの人が彼の全てを否定したって
私が彼の全てを肯定する。
その「やらなきゃいけないこと」が良い事だろうが悪い事だろうが、もうこの際関係ないんだ。
「そのために、今まで精一杯頑張ってきたんでしょ。」
毎日、ひどく頭痛がしただろう。
薬の副作用で、何度も吐き気に襲われただろう。
誰にも悟られたくないのに、時と場所を選ばずに目眩がして力が抜けただろう。
苦しかった。辛かった。痛かった。
それでも彼は、立ち上がった。
やり遂げようと、走り抜けた。
「かっこいいじゃん！すっごくさ！」
飛びっきりの笑顔で、私は言う。
この言葉を信じて欲しいと、心から思う。
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もちまる。(プロフ) - すずさん» すずさん、コメントありがとうございます！感動して頂いたようで何よりです。応援ありがとうございます！ご期待に添えるようこれからも頑張っていきますね！ (2019年8月11日 20時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 今この作品を見終わったのですが、とっても感動致しました。野坂くんも過去に戻ってしまうというところがこんな展開他にはないな、という感動を覚えました。更新、頑張ってください！これからも応援させて頂きます！ (2019年8月10日 0時) (レス) id: b95394d06b (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - おみかんさん» おみかんさん、コメントありがとうございます！そんなことを言って頂けて、ほんっとうに嬉しいです。応援ありがとうございます！今後も頑張っていきますので、完結までお付き合い頂ければ幸いです！ (2019年8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 姫菜さん» 姫菜さん、コメントありがとうございます！作品に入り込んでいただけだようで、とても嬉しいです。深くこの小説をお読み頂き、本当にありがとうございます！今後も是非楽しんでいただければ幸いです。更新頑張ります！ (2019年8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - めりさん» めりさん、コメントありがとうございます！前作から読んで頂いているんですね…！とっても嬉しいです。私も大好きいいいいいいこれからも是非お読みいただければ嬉しいです！！！！笑 (2019年8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月1日 21時
