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中身は普通 ページ42

「黒い卵、中身は普通だったね。」


山を降りてから、君は言った。
これもまた新しい発見、とでも言うように
生き生きとした表情だった。


「うん。」


「普通とは違っても、中身開けちゃえば意外とみんなと一緒ってもんだよね。はは、野坂くんみたい。」


「え?」


「ううん、何でもない。さぁ行こ!次は足湯だよ。」


普通とは違う、ということは自分でも把握しているから、別に何とも思わないけれど
中身を開ければみんなと一緒とはどういうことなのだろうか。


普通と違う僕は、君とはまるで違うし
中身だってまるで違う。


君みたいな光の中にいる人間が、僕と一緒であるわけないだろう。


結局君の言ったことをよく理解できないまま電車を乗り継いで着いた駅は、些かこじんまりとしていた。


だけど君のリサーチ通り、駅から少し歩けば足湯を楽しむ人で賑わっていて
温泉街らしさを感じられる場所だった。


「あったかい!気持ちいいよ、野坂くんも入りなよ。」


靴を脱ぐから、と君は一旦僕の手を離したから
どうするべきかと僕は一瞬頭を悩ませたけど、悩む必要はなかったらしい。


何も言わず、君はまた僕の手を掴んだ。


その手を少し引っ張られて、僕もまた温かいお湯の中に踏み入った。


それは確かに気持ちが良くて、心が安らぐような思いだった。


「ねぇ野坂くん。」


お湯の中で両足を軽く上下させながら、君は言った。


「何で、私なんかと旅行に来てくれたの?」


それは、難しい質問だ。


君がおよそ二ヶ月後に死んでしまうことを僕は知っていて、君が心残りのないようにその人生を終えられるよう協力したかったから。


こんなことを淡々と僕が答えたら、君は悲しむだろう。


…いや、こんな格好つけてばかりの理由じゃなくて
もっと本質的な理由を言おうか。


「君と、出かけたかったから。」


あと二ヶ月しか君と一緒にはいられない。


もう二ヶ月後には、君とはどこにも行けないし
何の話もできないし、何も一緒に食べられないし、並んで眠ることだってできやしない。


だから僕は今


君と一秒でも多く君といたい。


「…本当に?」


「うん。」


「本当に、本当?」


「本当。」


僕の言葉に、君はどこか肩の力が抜けたようだった。


「そっか。」


そして一言だけ、笑顔でそう呟いた。

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もちまる。(プロフ) - すずさん» すずさん、コメントありがとうございます!感動して頂いたようで何よりです。応援ありがとうございます!ご期待に添えるようこれからも頑張っていきますね! (8月11日 20時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 今この作品を見終わったのですが、とっても感動致しました。野坂くんも過去に戻ってしまうというところがこんな展開他にはないな、という感動を覚えました。更新、頑張ってください!これからも応援させて頂きます! (8月10日 0時) (レス) id: b95394d06b (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - おみかんさん» おみかんさん、コメントありがとうございます!そんなことを言って頂けて、ほんっとうに嬉しいです。応援ありがとうございます!今後も頑張っていきますので、完結までお付き合い頂ければ幸いです! (8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 姫菜さん» 姫菜さん、コメントありがとうございます!作品に入り込んでいただけだようで、とても嬉しいです。深くこの小説をお読み頂き、本当にありがとうございます!今後も是非楽しんでいただければ幸いです。更新頑張ります! (8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - めりさん» めりさん、コメントありがとうございます!前作から読んで頂いているんですね…!とっても嬉しいです。私も大好きいいいいいいこれからも是非お読みいただければ嬉しいです!!!!笑 (8月5日 9時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月1日 21時

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