離れるということ ページ32
……けど。
ごめん、お母さん。
どうにもぼーっとしちゃって、適当にやったら大変なものが出来上がってしまいそう。
やれやれ、と大さじを取り出して、醤油の蓋を開けた。
トポ、という液体の音。
落ちてくる茶色の滴。
あぁ______どうしてだろな。
勝手に手が震えて、視界はぼやけて、無意識の内に息が止まる。
私、何でこんな気持ちでこんなことをしているんだろう。
普通のことすら、まともにできない。
“あの人の傍から、離れてください。”
そう言った彼女の眼は、真剣そのものだった。
あれだけ人見知りで、恥ずかしがりな彼女が教室中の視線を集めるくらい大声を張って。
私だけに訴えるように強く、強く言ったのだ。
「…はな…れる？」
生姜焼きの味がどうなったかは、よく知らない。
ただ何とか形としては完成させて、そのお皿を机の上に置いておいた。
西蔭くんの分だけだ。
私は何だか、そういう気分にはなれないから。
「離…れる。」
ソファの上で膝を抱えながら、唇で“離れる”をなぞった。
_______無理だ。
私は、彼から離れることはできない。
例え彼が悪者だろうと、裏切り者だろうと、私を傷つけることがあろうとも。
私は彼から離れられない。離れたくない。
恋という催眠がそうさせているのか、私が本心から思っていることなのかは分からないけど。
私はずっと、ずっと野坂くんと一緒にいたい。
好きとか嫌いとか、それ以前に。
野坂くんは私にとって、すごく大切な人だから。
「……ごめん、亜芽ちゃん。」
彼女の声が、頭の中でガンガンと鳴り響いていた。
そんな中で、私はそっと指を動かす。
こういう時頼りたいのは。そばにいて欲しいのは、やっぱり。
_________この人なんだよ。
長いコール音。
西蔭くんはまだ帰ってこない。
つまり野坂くんの練習だって、まだまだ終わらないのかもしれない。
結局私が残したのは、1件の不在着信だけだった。
「……はぁ。」
わざとらしくすら聞こえる、大きなため息。
だけど決してわざとじゃない。
いくらため息を吐いたって足りないくらいの厄介な事情を、私は今、抱えている。
「…えっ。」
そのため息から間を空けること、2、3秒。
適当に置いた携帯が突然鳴って、鈍い振動音が静かに響いた。
「……もしもし？」
「もしもし。」
いつもと変わらない声。
あの落ち着いた口調と温度。
「どうした？」
何故だかそれだけで、泣きそうになった。
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もちまる。(プロフ) - 絵菜さん» これからどんどん、色んなことが起こってあんなことやこんなことが明らかになっていくので、是非楽しみにしていてください笑 (2020年8月18日 14時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 水の犬。さん» ご返信遅くなってしまってすみません…！コメント、こちらにも残してくださってありがとうございます(´；ω；`)亜芽ちゃんの正体、これからどんどん明かしていきます〜！これからもお楽しみ頂ければ幸いです！ (2020年8月18日 14時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - ヴ!!!こ、こわい。でも気になる。ヴぅ (2020年8月13日 22時) (レス) id: bc65156607 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。亜芽ちゃん想像する限り私の好みっぽい子なんですが…亜芽ちゃんの正体？や、存在が展開にどう影響を与えるか気になります！いつも素敵なお話ありがとうございます。無理せずもちまる。さんのペースで頑張ってください！ (2020年8月8日 22時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 絵菜さん» キュンキュンな方向に向かわせてますが不穏な空気も出してしまいました〜〜！！けどお楽しみに〜！！！ (2020年8月7日 0時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年7月15日 22時
