“悠馬くん” ページ29
「うん、一応ね。ちょっと借りがあって、仕方なくマネージャーを。」
「マネージャーさん…！すごい、どこのですか？」
仕方なく、とは言っても。
これも素直になれない私の悪い癖で、今は結構…すごく、楽しい。
サッカー部は私が見つけた、もうひとつの居場所と言っても過言ではない。
「サッカー部。元々サッカーなんて、あんま詳しくなかったんだけどさ。」
彼女の相槌を待つ。
だけど…何故だろうか。
そこにあったのは数秒の沈黙と、机に落とされたあんぱんだけだった。
「…亜芽ちゃん？」
あんぱんから、恐る恐る目線を上へ。
そこにさっきまでの笑顔はなくて、焦点の合っていない眼差しが空中を漂っていた。
「……サッカー、部。」
「う…うん。」
「あ…えと。じゃあAさんは…悠馬くんのことも、知っているんですか。」
亜芽ちゃんの目線は、相変わらず下向きのままだ。
だけどそこに、照れ隠しや人見知りな一面はもう見えない。
その目で何を見ているのか、分からないけれど。
たちまち瞳が黒ずむような、濁っていくかのような。
そんな光の流れを、確かに見た。
「それって…野坂くん、のこと。」
「はい。悠馬くん…野坂悠馬くんです。」
「知ってるよ。でも、何で？」
恐る恐る、聞き返す。
“彼女には近寄らない方がいい。”
彼の言葉を信用しなかった後悔が、ほんの少しだけ顔を覗かせていた。
「Aさん…Aさん。」
彼女は名前を、2度呼んだ。
_____知ってる。この感じを、私は知ってる。
野坂くんと同じだ。その声に緊張と真剣さを織り交ぜて、1度目は小さく、2度目は少し大きく。
そしてその次の、言葉は。
「あの人の傍から、離れてください。」
「え…。」
「ダメです。悠馬くんが学校に戻ってきたら、あの人にはもう近寄らないでください…！」
彼女はその勢いで、席を立った。
ガラン、という椅子の音が、教室に大きく響き渡って視線が集まる。
「な…どうして？それはできないよ。だって私…野坂くんとはすごく仲も良いし、それに…。」
「嫌です。どうしたってダメなんです。だって悠馬くんは________。」
彼女の声が、小さく震える。
それと同時に、机の上に置かれたその両手が、ぐっと拳を握った。
「…何？」
「……何でも、ありません。」
彼女のおさげが、空中になびく。
「ちょ…亜芽ちゃん！」
彼女がかじったあんぱんが、野坂くんの机の上で、バツが悪そうに転がっていた。
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もちまる。(プロフ) - 絵菜さん» これからどんどん、色んなことが起こってあんなことやこんなことが明らかになっていくので、是非楽しみにしていてください笑 (2020年8月18日 14時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 水の犬。さん» ご返信遅くなってしまってすみません…！コメント、こちらにも残してくださってありがとうございます(´；ω；`)亜芽ちゃんの正体、これからどんどん明かしていきます〜！これからもお楽しみ頂ければ幸いです！ (2020年8月18日 14時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - ヴ!!!こ、こわい。でも気になる。ヴぅ (2020年8月13日 22時) (レス) id: bc65156607 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。亜芽ちゃん想像する限り私の好みっぽい子なんですが…亜芽ちゃんの正体？や、存在が展開にどう影響を与えるか気になります！いつも素敵なお話ありがとうございます。無理せずもちまる。さんのペースで頑張ってください！ (2020年8月8日 22時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
もちまる。(プロフ) - 絵菜さん» キュンキュンな方向に向かわせてますが不穏な空気も出してしまいました〜〜！！けどお楽しみに〜！！！ (2020年8月7日 0時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年7月15日 22時
