抜け殻 ページ7
【you】
「はあ！？なにそれ」
社長の息子と婚約したと伝えた時の大我の顔は未だにすぐ思い出せる。
仕方ないよね。社長命令みたいなモノだし。完全に社畜だし。拒否権なんかある訳ないし。
「社長の親戚予備軍ってことで昇進するらしいよ」
「政略結婚？つか、人身売買じゃん！」
おじさんのこと見損なったよ！って可愛い顔してプリプリ怒ってるけれども。
私に将来やりたいことでもあって、本気でそれを主張できたなら。
父親だって無理強いはしなかっただろう。
10歳以上年上と訊いて絶対にド変態のロリコン野郎だと思ってた社長の息子が、極々常識的ないい人だったこともあって。
なんかもう、どうでもよくなっちゃったんだ。
「大学卒業してからでいいって言われたけど、勉強したいこともないから、高校出たら」
「おかしいよ、そんなの」
「・・・」
「なんで？どうしてAは平気なの？」
「・・・平気じゃないって言ったら、大我が助けてくれるの？」
1度頷いた話を拒否したら親子関係はズタズタになるだろう。
もちろん、今すぐ叩き出されることはないだろうが。そのまま家に居たって抜け殻のような未来しかない。
結局、選択肢は1つしかないじゃない？
「大我、一緒に逃げてくれる？」
「・・・」
「ほら、出来ないくせに」
だったら、期待させないで。
この日から、私は大我の家に出入りするのを止めた。大我が自分の感情込みでおじ様たちに話したからか親同士にも距離が出来て。大我も仕事が忙しくなって学校ですれ違うことも減った。
そして、せめて残された時間を楽しみ尽くすと決めて。
周りがひたむきに努力する姿を横目で見つつ、欲望の限りに遊び回った。
『おねーさん、ひとり？』
高校3年生の後期なんて、登校しなくてはならない日は多くなく。
受験勉強も就職活動もなければ、時間は有り余るほどあるし、規則正しい生活をする必要もない。
残念なことに、女にとって“若さ”は最高の武器で。
制服を脱いで歓楽街をぶらつけば、その日のディナーは手に入る。
それなりの報酬を求められることもあったけれど、恋愛無しのゴールが決まっている以上、誰とどうなろうと傷つくことは無かった。
「退学にだけは、なるな」
父親に言われたのは、これだけ。
学歴という商品の外箱に傷さえつかなければ、中身なんてどうでもよかったんだろう。
「・・・A？」
何か月も会ってなかった大我と渋谷の繁華街で鉢合わせしたのは、あと数日で卒業式を迎える夜のこと。
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tamami(プロフ) - MMMさん» コメントありがとうございます！嬉しいです。 (2020年9月4日 17時) (
レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
MMM(プロフ) - 最高でした。数少ないお気に入りの大好きな作品になりました。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年9月4日 1時) (レス) id: 649dee7d4f (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - りかちゃまさん» こちらこそお読みいただいてありがとうございます(^^) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - いつも読ませていただいてます！ありがとうございます (2020年8月7日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - ゆめの*123さん» ありがとうございます(^^) (2020年7月29日 19時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tamami | 作成日時：2020年7月22日 16時
