優しい嘘 ページ18
【taiga】
無事、デビューはしたものの。
コロナの感染拡大は止まらず、主演ミュージカルの公演中止が決まり、他の仕事も悉く延期や中止となってしまった。
更には6月に出すはずのCDまでが発売延期になって、流石の俺もかなり凹んでしまった。
“どーも！ジャスティン・ビーバーです！”
そんな中でも明るいコイツはYouTuber風動画なるモノを送りつけて来るし。
“京本会で動画上げましょうよ”
なぜかTravisだらけの京本会は普段と変わらず声を掛けてくれる。
うん、落ち込んでいたって仕方がない。
ステイホームの過ごし方にも慣れてきたある日のこと。
筋トレやストレッチをして喉が渇いたのでお茶を取りに行こうと部屋を出る。
『もしもし、ご無沙汰してます、京本です』
父ちゃんの声だ。誰かに電話してるんだな。
キッチンに行くには電話の側を通らなきゃないし、終わる頃でいいやと思い部屋に戻る。
10分後、そっとドアを開けると、まだ聴こえる話し声。
「まだ喋ってんのかよ」
長い、誰とだよ。つか、家電でこれは珍しいな。
うん、でもお茶飲みたいし、限界。
『え！？Aちゃん、都内に居るんですか？』
階段を降りかけた俺の耳に入ったのは、今まで想像もしなかった言葉だった。
「・・・マジかよ」
ズルズルとしゃがみこんで、そのまま聴き耳を立てる。
“北海道には行かなかった”
“都内で学校に通っていた”
“今は、看護師さん”
断片的に聴こえる声。でも役者である父ちゃんの発声だから、内容はほとんど聴き取れてしまう。
声が通って滑舌がいいって、日常では良し悪しだななんて。人は驚きすぎるとどうでもいいことを考え出すみたいだ。
『ええ、大我には黙っておきます』
・・・なんでだよ。
電話が切られたのと同時に階段を降りると、解りやすく挙動不審になる父ちゃん。
『お前、聴い』
「聴いたよ」
そのままキッチンに行き、ペットボトルのお茶を取り出す。
「俺に言うなって？」
『お前に心配されたくないんだろ』
そんなことは前から解ってる。
俺がジャニーズに入ってから、変な誤解をされないようにと人目につく場では距離を取るようになったし。
連絡を断ったのも居場所をごまかしたのも、全部俺のためだと思ってやったことなんだろう。
でも、そんな優しい嘘をつかれるくらいなら、冷酷な事実を突きつけられたほうがマシなんだよ。
『都内に居るなら、なにかで偶然会えるんじゃないか』
父ちゃんの呟きが現実になるまで、あと少し。
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tamami(プロフ) - MMMさん» コメントありがとうございます！嬉しいです。 (2020年9月4日 17時) (
レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
MMM(プロフ) - 最高でした。数少ないお気に入りの大好きな作品になりました。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年9月4日 1時) (レス) id: 649dee7d4f (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - りかちゃまさん» こちらこそお読みいただいてありがとうございます(^^) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - いつも読ませていただいてます！ありがとうございます (2020年8月7日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - ゆめの*123さん» ありがとうございます(^^) (2020年7月29日 19時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tamami | 作成日時：2020年7月22日 16時
