リスタート 2 ページ14
【you】
「スマホ、水没して」
「・・・」
「住所変更面倒だから、向こうで買うの」
「・・・ホント？」
「ホント」
嘘です、リビングに置いてあるバッグの中です。
「じゃあさ、俺の連絡先・・・書くものある？」
「全部、ダンボールに詰めちゃった」
嘘です、バッグに手帳とボールペンあります。
「なんで、俺から逃げるの？」
大我を巻き込みたくないからだよ。
「引っ越し先だって、おばさんに伝えてあるし」
「じゃあ、なんで連絡取れなくなったのさ」
「だから、スマホ水没させたからだって」
もちろんこれも嘘。
だって連絡なんか取れたら、大我、めちゃくちゃ心配しちゃうでしょ？
今でも好きで居てくれるなんて自惚れている訳じゃないけれど、大我は優しすぎるから。
ただの“幼馴染”だとしたって放っておけないんでしょ？
グループも出来てミュージカルも決まって、これから大事な時期なんだから。
私なんかに関わらないほうがいいんだよ。
「A、俺のこと嫌い？」
捨て犬みたいな顔していきなりなにを言い出すかと思えば。
でも、ここで。
「・・・嫌いじゃない」
“嫌い”って嘘をつけるほど私は強くなかった。
「うん、じゃあ、写真撮ろ？」
「写真？」
「しばらく撮ってないじゃん、ね」
お互いの七五三、お互いの入卒。1つ違いだから全部ずれるのに、毎度ツーショットで写真を撮っていた私たち。
確か、最後に撮ったのは大我の高校入学だったかな。
まあ、写真くらいなら。
「いいよ」
「よし、下行こう！」
「へ！？」
自撮りかと思いきや、父親にスマホを渡して私との写真を撮らせて。
「ありがとうございました、ではお元気で」
ヤバい！遅れる！と騒ぎながら帰っていった。
「・・・はあ」
あんなにデカくなったくせに、やっぱり年下なんだなあ。
『A』
「ん？」
『大我くんに、ちゃんと話したのか？』
「離婚したことは言った」
でも、それ以上は話すつもりは無いから。
「お父さんたちと北海道に行くって言ってある」
『・・・』
「そういうことにしといて」
『本当に、いいのか？』
「うん」
都内でひとりで頑張ってますなんて言ったら、大我に世話を焼かれちゃう。
この春から新しい生活がはじまって、私も忙しい日々を送っている。
なんとか時間を作って実家に来たのは、置きっぱなしだった子どもの頃の思い出たちを整理して持ち帰るため。
「よし、行くか」
誰かに身を任せるのではなく、自分の力で生きていけるようになるために。
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tamami(プロフ) - MMMさん» コメントありがとうございます！嬉しいです。 (2020年9月4日 17時) (
レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
MMM(プロフ) - 最高でした。数少ないお気に入りの大好きな作品になりました。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年9月4日 1時) (レス) id: 649dee7d4f (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - りかちゃまさん» こちらこそお読みいただいてありがとうございます(^^) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - いつも読ませていただいてます！ありがとうございます (2020年8月7日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - ゆめの*123さん» ありがとうございます(^^) (2020年7月29日 19時) (レス) id: 22fb3c50cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tamami | 作成日時：2020年7月22日 16時
