夢の後先 (ページ10)

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atosaki 10 ページ10

【kento】

呪文もしくはお経のトーンで進む講義を真剣な眼差しで聴くAちゃん。コスプレをしていない素の姿は、髪が肩につくかつかないかの長さだったこと以外は、驚くほど「そのまんま」だった。

これ、恋愛小説あるあるの「本人が全く自覚していない超美形」パターンだぞ、おい。

剣術小町という偶像に惹かれて。

アイドルだから大っぴらに恋愛どころか異性の友達と関わるのも避けて生きてきたけれど。ふと君を見た時に、アイドルでもアイドルを好きになるのは問題ないんじゃね？ということに気がついちゃって。

ほら、ジャニーズにだってアニオタとか居るし！相手が2次元か3次元かの違いなだけじゃん？そもそもコスプレだから元ネタ2次元じゃん！！！

後で冷静に考えてみたら、すんごい理屈だけどね。

それにしても。絶対に俺のファンは居ないと断言できるマニアック授業で一緒なったのには驚いた。
最初は偶像を壊すことに抵抗があって、話しかけるかどうか悩んだけれど、同じ教室に居たら絶対にガン見しちゃうし、そしたらますます怪しいお兄さん認定されちゃうし。

「中島健人ヤバイ」ってＳＮＳに書き込まれても困っちゃうし。

・・・それからの展開は早くて、スマホの中の偶像は授業で会ってしゃべれるアイドルに変わった。

家族も部活も男だらけ、女子力何それ美味しいの？と笑う君は、良い意味で男慣れしてて。
更に「アイドル中島健人」には全く興味がなく(いや、それもどーかと思うけど)単なるセンパイとして接してくれるから、週1回の授業がものすごく楽しみになって。

「Aちゃん、冬休みってなにしてるの？」
「バイトですね」
「夏に言ってたあれ？・・・ほら何だっけ？あの」
「学童保育ですね」
「そうそう、それだ」
「中島健人に学童保育って、一生関係無さそうですもんね」
「待って、俺、どんなイメージなの？」
「怪しいお兄さん」
「・・・お正月とかは？実家帰るの？」
「寒稽古があるんですよね、だから毎年年末年始には帰らないで、試験終わって次の学童バイトが始まるまでの間に帰省してるんです」
「じゃあ、紅白も見ないか」
「うん」
「・・・」

地下アイドルに嵌まるオトコの気持ちが解った大学5年生の冬。

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ここまでお読みいただいてありがとうございます。tamamiでございます。
・・・さて皆様、こーちはいったいいつ出るんや！とブチ切れ気味のことと思います。
もう少しで時系列が動きますので、ちょいご辛抱くださいませ。