atosaki 29 ページ29
【you】
・・・どうして、こんなことになっているんだろう。
「ゴメンね、急に」
『いや、全然いいんだけどさ。家じゃ親たちが起きちゃうしな』
「そうそう、変に気を使われるのも嫌だし」
『だよな。いいよ、お前がひとり暮らしするようになったら、いろいろ使わせて貰うから』
「そーしてください」
『都内のイイトコ住め』
「横浜から出たくねぇ」
『芸能人だろ!』
バイクから降りてきたこーちさんに、歩いて帰るのは危ないと止められ、家まで送ると言われたがそれは流石に問題が!と丁重にお断りした結果。
私の家とは逆方向。辛うじて終電があった方面に住むこーちさんのお兄さん宅に回収されている。
俺んちだから変なことされる心配ないから、安心してていいからね、とシャワーに行ってしまったお兄さん。流石に人んちでしねーよ!と毒を吐くこーちさん。
「・・・ごめんなさい」
夏用の布団とクッションが置かれた1LDKのリビング。その隅っこで膝を抱えて俯く。
「気にしないで。地元なのに終電気づかなかったのは俺だし」
「いや、それじゃなくて。あ、もちろん終電飛ばしたのもごめんなさいですけど」
「?」
「彼女さん・・・ですよね」
「・・・」
「約束してたんじゃないんですか?」
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【yugo】
気にしちゃってるなら、話したほうが良いのだろうか。
・・・正直、まだ消化できてないんだけど。
デビューどころかグループも組めない。そろそろ期限を決めなきゃと思っていて。そんな時期に付き合いはじめた彼女には「ジャニーズは大学卒業までかな」って言っていた。
嘘はついてない。その時はそのつもりだったから。
でも、就活のタイミングでSixTONESが結成されて。俺は就職先としてSixTONESを選び。そこからの小さなすれ違いがだんだん大きくなって。
グループができても続く保障はない。前のグループのことがあるから、そんなことは解ってるし、解ってるからこそ本気で取り組んでいたのだけれど。
いわゆる大手企業に就職した彼女にとっては、その不安定さは我慢できないくらい怖いことだったみたいで。
それなりの話し合いをして別れることにしたんだ。
喧嘩別れでも浮気でもない。もちろんお互い嫌いになんてなっていない。端からみたら平和で円満な別れなんだと思う。
だからこそ、逆にしんどい部分がでかくて。
・・・話してしまったら俺の消化不良をぶつけてしまいそうな不安と、聴いてほしい気持ちに揺れながら、兄貴がくれた缶ビールに口をつけた。
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作者名:tamami | 作成日時:2020年4月21日 10時