夢の後先 (ページ28)

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atosaki 28 ページ28

【yugo】

「こーちさん・・・」

やっちまった、という表情で俺を見つめるAちゃん。

この子はホント面白いし可愛らしい。これから楽しくないことが待っているというのに、ついつい笑顔になってしまう俺。

・・・それもAちゃんにとってはキラキラに映るんだろうか。

「Aちゃん、こんな遅い時間までアルバイト？」
「今日は暑気払いで・・・あれ、私の名前？名乗ってなかった気がするんですけど」
「健人から聴いた」
「先輩め、人の個人情報をペラペラと」

あ、すみません、名前言うの忘れちゃってて、と苦笑いしながら、改めて挨拶してくれるAちゃん。少しの間、缶を片手におしゃべりをする。

「こーちさんはお仕事帰りですか？」
「そう。健人言ってなかった？サマパラ」

『ごめん！遅くなって』

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【you】

バイクの音と女の人の声。

「そんなに待ってないから平気」
『なら良かった』

女の人と目が合う。

「あ、その子なら大丈夫だよ。健人の友達、この辺でバイトしてる子で俺のことも知ってる。」
『そうか。ごめんなさいね、怪しい人みたいに見ちゃって。』

ヘルメットを外してニッコリ笑う女の人。頭の中で咄嗟に「ワタシハ此処ニ居テハダメダ」と警告が響く。

・・・おそらく「彼女さん」だ。

「私、終電あるので！失礼します！」

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【yugo】

・・・マズい、終電で帰る予定だったのか。引き止めちゃったよ。

『優吾、あの子終電って』

同じことに気がついたようで「元」彼女が呟く。

「ヤバイな」

自転車でも来れると言ってたから、終電が無いと知ったら歩いて帰ろうとするんだろう。こんな夜中にそれは・・・。

『駅まで乗せてくから、追っかけなよ』
「悪いな、ありがとう」
『そこから先は何とかして』
「うん・・・あ、これ」

ポケットから鍵を出して手渡す。ここ何年かはいつもキーケースに入っていた、合鍵。

『確かに受け取りました』

・・・今までありがとう。

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【you】

ホント、大バカ者だ。

こーちさんと会えたのが嬉しくて、終電が近いことを忘れておしゃべりして、彼女さんと鉢合わせして。

半泣きで辿り着いた駅で、電光掲示板の無情な文字を見つめて立ち尽くす。

明日は休みだし歩くか。2時間もあれば着くだろうし体力には自信あるし。

震災以来持ち歩いている懐中電灯を取り出し、深呼吸して駅に背を向けた時、さっきのバイクが目の前に止まり。

後部座席の人がヘルメットを外して、私に近づいてきた。